組み敷かれる恐怖に体が強張った。
獰猛な視線がオレの顔上から注がれる。
その目を合わせて思う。

・・コワイ・・・。

何度経験しても、オレはこの男を埋め込まれる
恐怖に勝てないでいた。



モリヤ ナギ。センパイと喧嘩中。


「・・・っ」
センパイの唇がオレの耳に齧りついた。
嬲るような動き。
決して、オレを気持ち良くさせるとかそんな動き
じゃない。
ワタヌキの顔は。
この機会を丁度イイって笑って。
オレをイタブッテ、思う様、オレの体を喰い付く
してやろうって顔だった。

今更だ・・!
今更謝ったって、もう遅い・・!
っていうか、オレだって別に謝りたくなんかないっ
だけど、こんな至近距離で。
お前を喰ってやるって顔されたら、オレだって意地
とかなんとか言ってるヒマなんかない。
怖気が勝つ。

「センパイ・・ッ」
「泣いても」
センパイの口がオレの耳元で動いた。
「ゼッテェやめねぇ」
その瞬間にオレは耳から犯された。
ワタヌキの舌がオレの耳の淵をべっとりなぞって、
その小さな窪みも嘗め尽くし、脳みそまで響くよう
な熱い吐息を、そこで吐いた。
顔が熱い。
オレの肺は、もう通常の働きを成してなかった。
息を吸っても吸っても、苦しさは解消されなかった。
逆に、意識すればするほど、呼吸の仕方がギコチナ
くなっていく。
「や・・だ」
ワタヌキの左手に両腕を頭上で纏められて、唇と唇
が溢れた唾液で濡れて、それだけでもう興奮はマックス。
オレは滅茶苦茶、腹立ってたのに、どうしても、熱を
抑える事が出来ない。
体の熱。
自分の怒りより、彼の怒りより、今は、熱にカラダを
支配されていた。
「ナギ」
この声に。
この掠れて、欲情したオトコに名前を呼ばれて、求め
られて、フツウでいれるワケがなかった。
「あ・・・ッセンパイぃ」
ワタヌキの手が遠慮無しに、オレのカラダの内側に向う。




そもそも、喧嘩中のオレ達がなぜこんな熱くカラダを
擦り合わせているのか。
話はこの数分前に戻る。


夏合宿中の体育館。
真昼間は誰も居ないここで、オレは、センパイに付き
合って、一学期中と合宿中の総スコアの成績をまとめていた。
これは、ジャンケンで負けたセンパイがオレをムリヤリ拉致。
で、他の部員はどこ行ったかって、ねえ。
夏ですよ。
夏の一時四時。
サイアクの暑さ。
この時間は練習するだけムダ。
そんな訳で、夕方の練習時間までを、本日は有意義にプール
で過ごすという、オイシイ予定だった。
が。
「・・・・負けんなよ・・」
淡々と走るワタヌキのシャーペン。
「っるせえな・・」
「シンジランネエ・・・なんで100人近くいんのに、全部
負けるかな・・・」
「・・・・・手動かせよ」
ノートの上、オレのペンは試合放棄。
「いいなぁ・・・プール・・」
顔を上げたオレをチラリと見てセンパイが言った。
「どうせ」
ワタヌキのノートがまた1ページ捲られた。シャーペンは滑る
ようにスラスラと数字を書いていく。
「お前は入れねえだろ」
「なんで!?」
ワタヌキが目元を指で掻きながら顔を上げる。
そして。
オレの胸を、シャーペンの頭でスッとなぞって、一点で止める。
「キスマーク」
カッとなって、オレは勢いで、ワタヌキのシャーペンを弾き飛ばした。
広い体育館の中をカツンッカツンッカラコロカラ・・とシャーペンが
飛んで行った。
ワタヌキのつり目が更に細まり、瞳が鋭利に暗く光る。

しまった・・とは思ってた。
けど、もしかして・・・と思ったら謝るより問い詰めていた。

「ワザとかよ・・・」
「あぁ?」
不機嫌さを隠さない低いワタヌキの声音に、一瞬強く後悔した。
「プール・・入れないようにするために・・アンタ・・」
「アホか。んなわけねえだろ。お前が禁欲させっから、抑えが
効かなかっただけだ。感謝しろよ。お前にオレが付き合ってや
ってんだぞ。取って来いよアレ」
ワタヌキは体育館の隅まで飛んだシャーペンを指差した。
「は?オレに付き合ってる・・って何それ・・」
「オレが、んなジャンケンで負けるわけねえだろ。替わって貰った
んだよ。お前のカラダ、他のヤツらに見せるわけいかねえだろ。
いいから、拾って来いよ。仕事終んねえぞ」

このオトコがオレより一歳年上なのは知ってる。
でも、なんだこの大人な対応。
つーか、オレはな、プール入りたかったんだよ・・!
それを、それを、アンタは・・!
そもそも、コイツがオレの乳首のとこにキスマークなんか
つけるから、こうなったんじゃねえか・・!
それを、まるでオレを哀れんでるみてえに・・っ
オレが可哀想だからって感じに・・・っ
なんだよっなんなんだよっ
なんなんだよ・・・!!

オレはワタヌキの指を弾き上げた。
「知るか!!」
それから、オレはそこから立ち上がる。
と、ワタヌキの腕が素早くオレの腕を掴んだ。
「ナギ」
「離せよっ」
「拾って来たらな」
「ヤダよ!!」
「拾って来い」
「自分で取って来いよ!」

すげえ力だった。
握られた腕の血が止まりそうだった。
その腕を、ワタヌキは座ったままで、自分の方へと引いた。
ダーーンッてでっかい音が体育館に響いた。
「イッテ・・!!!」
後頭部と背中が痺れたように痛い。
頭を両手で押さえている体の上にワタヌキが圧し掛かってくる。
「ムカついた」
一言ワタヌキが吐いて、オレの唇を塞いだ。



タスケテ・・・ッ





体育館はオレの声を何倍にも拡張させて耳を震えさせた。
真昼間の体育館で、オレはワタヌキに組み敷かれて、大きく
開かされた足の間に、ワタヌキのオスを迎え入れていた。
「アアッアッアッ・・フッアッヤッもう、も、ヒッ・・!!」
角度を変えながらワタヌキが腰を突き出しピストンする。
硬い板間の上でオレの関節が時々悲鳴を上げる。
ワタヌキの汗がポタポタとオレの腹に落ちると、その雫で腹
を撫でた。
「うっフゥッ・・せ、せんぱ・・!!」
烈しく揺さぶられてオレはついに涙を流した。
両手を挙げさせられた格好のせいで、オレは涙を拭く事も隠す
事も出来なかった。
ただ、センパイ、センパイって涙流した。
我慢してた分、もう止まらなかった。
喉がひっかかる。
涙で焼けるみたいに喉も目も熱かった。
口も喘ぎと一緒に、ヒックヒックと泣き出した。
それで。
ガツガツとピストンしてたセンパイが大きく溜息を吐いて止まる。
「しょうがねえなぁ・・・」
ワタヌキはオレの両手を離して、オレを自分の上へと抱き上げた。
それから、キツク背中を抱き締めながらキスした。
「ンンッンンンッーーーーー!!!」
強く腰を叩きつけられる。
その瞬間オレの腹の奥深くで、ワタヌキの震えを感じた。
「泣くなよ・・・テメ・・反則だろ」
息を切らしながら、ワタヌキが呟いた。

反則はアンタ自身だよ・・!!

だけど、オレはこのオレを陵辱したオトコを離せない。
カラダを繋げたまま、オレはその背中をがむしゃらに掴んだ。
掴んで、ワタヌキの胸で泣いてしまう。
やさしくして欲しくて、泣いてしまった。
それを、知ってるのか、無意識なのか、ワタヌキの手がオレの
髪をやさしく梳く。
オレの頭へそっと顔を寄せて、ワタヌキがオレの名前を呼ぶ。
「ナギ・・・ナギ・・・悪かったって・・・泣くなよ・・」
「ん・・・ウン・・・」
それで、また背中を撫でられた。




結局。
オレは勝ったのか?負けたのか?
謝ったのは、センパイだったけど。
泣いたのはオレ。

センパイは中出しした事も謝ってくれて、それから。
「夜中、二人でプール行くか」
って、またノートにシャーペンを走らせた。
「・・・いいよ」
目真っ赤のオレが言うと、センパイはまたオレの頭を撫でた。
「じゃ、今度連れてってやるよ、どっかプール」










センパイって意外とかわいいとこもあると思う。


だけど。
もう、オレ、コイツと絶対!
喧嘩しない・・!!









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