ついにオレはここへ立つ。

夏真っ盛りの上稜高校。

その門を潜る。




チヅカナツト。
オレの季節が来た。
なら。
今ならなんでも出来そうだった。
今なら、彼に会える。
会いたい。

また彼の顔を見たい。
彼の。

そう。
モリヤ ナギの顔を。







来年は受験だ。
今のオレはいくつかの私立高校から誘いを
受けていた。
クラスのヤツらは、ヒーヒー言って勉強し
てる中、オレは一抜け。
中3の夏休みを満喫してるってワケだ。



ホンライならな。


7月のトレセンでオレはセンセーショナル
なショックを受けた。
しかも、恋とか愛とか、んなもん、すっ飛
ばして、ただただ、オスの本能丸出しの、
セックスがしたいっていう感情モロ出しの
欲情。

それを抑える術を知らないオレは、あのモ
リヤ ナギの顔を脳裏に焼き付けて、目を閉
じて、右手をひたすらに動かした。

こんな想像だけで。
毎日毎日。
よくもオナれるもんだと自分で感心する。

夏休みになって、ガッコとかそんなシガラミ
から解放されて、オレなんか勉強する必要も
無いから、もっとオレの頭ん中はモリヤナギ
一色。
このままじゃ、チンポが擦り切れるかも知れ
ない。

そんなキキカンを感じて。
そう、結局はなんでもいいんだけど理由なんてさ。
とにかくもう、会いたくて会いたくて会いたくて
ここまで来ちまった。

会ってどうするか?
んなもん、そん時考えればいい。
もうとにかく、あの顔がホントにあるって確信で
きて、それで自分の目で生に見れればとりあえず
それでいい。
とにかく。
アレが夢なんかじゃなくて、本当に存在してたって
現実味が欲しい。
だって、毎日妄想で抜いてんだぜ?
そりゃ記憶も薄れてくるっつーの。
薄明かりで見た。
ミダラなモリヤ ナギの顔。
ワタヌキタツトを咥えて苦しげに目を細めたあの顔。
はっきり言って、オレはホモじゃねえ。
ホモじゃねえけど。
あの顔はキた。マジキた。
で、それが好きとかどうか全然自信ない。
でも、あの顔をオレは毎日ズリネタにしてんだよな。
それってどうなんだ?
エロ本の写真なんて、マジどこの誰だって構わない。
だけど、イク瞬間の顔くらいは選びたいから、ペラ
ペラページ捲りまくって、一番イイって思う顔のとこ
で、オレは発射させる。
それが。
始めから終わりまで、オレはモリヤ ナギのフェラし
てる顔思い出してイケる。
で、これが恋かって恋だろって言われると結構悲しい。
だってさ。
恋って、もっとキレイなもんじゃん?
なんか苦しくなってさ。ま、今確かにオレも苦しいけど。
なんつーか、こう毎日が楽しくて好きが募ってくって
いうか・・・。
そんなんじゃねえのかな?そりゃまともに好きとかんな
って付き合ったコトとか無いから想像の域を出ねえけど。
そんなアコガレみたいのがあるんだよ。
恋って。
とにかく。
アレは、オレが生で他人のセックスを見たからこんだけ
萌えてるワケで、オレはホモじゃないし、モリヤ ナギ
に恋してるワケでもない。
けど。
そう。これはオレが面白いから、からかい半分で、モリ
ヤ ナギに会いに行く。
それだけだ。


そう自分に納得させ。
夏休みだってのに、クリーニングから戻って来たばっかの
制服を着て、親にもテキトー言って、電車で一時間ばっか
かけてここまで来たのだ。

少しドキドキする胸が痛い。
もうすぐだ。
もうすぐ会える。
あの人がここにいるんだ。

真夏のギラギラした日差しが校舎まで続く並木の新緑の間
からチラチラとオレを刺す。
校舎の手前にある体育館の影に入ると、僅かな風でも涼しく
感じられた。
「あっちー」
ただ歩いてるだけで汗が出た。
並木に取り付いた蝉の泣き声が、死ぬ程の暑さを強調する。
と、その蝉の鳴き声に被ってネコの声が聞こえた。
ナァ〜オって。
そのドラ猫っぽい鳴き声に気が引かれる。
ウチでも猫を飼ってる。
もち、オレが拾ってきたブチねこ。
猫ってぶっさいくな顔してる方がなんかカワイイんだよな。
その猫の声がする方へと向うと、オレにびびったのか、突然
ミケ猫が自転車置き場の方へとダッシュした。
それから、自転車のタイヤの陰からオレを除き見てる。
「うおデケー・・、デブネコだなお前」
オレは、距離をとって、猫を手招きした。
その辺に落ちてた木の枝でチロチロと誘う。
と。
オレの背後からダーーーン!!て、デカイ音がした。
体育館の中からだ。
オレはバスケ部かなと思って気にもしないで、猫を誘惑した。
枝の先の葉っぱが、猫の目をクギヅケにした。
好奇心に負けた猫が少しずつ近づいて来る。
オレも少しずつ近づく。
と、ついにでぶ猫はオレの前まできて猫パンチを繰り出した。
「バカめ」
右に左に枝を振ると、一テンポ遅れてついてくる。
まさにデブ猫!
目の前に来たデブ猫に手を伸ばすと、オレの手にまで攻撃して
きやがった。
「こんにゃろー・・!!」
一瞬のスキをついてオレはデブ猫を抱き上げた。
「うおし!ゲット!!」
と笑った後ろから今度は悲鳴が聞こえた。
それから。
そう。
まさに。
セックスしてるみたいな声が聞こえてくる。
オレは猫を抱いたまま、入り口へ近づいた。
その間中も烈しい喘ぎ声は続いてる。
そっと中を覗いた。

体育館の片隅で、男が腰を振ってる。
アンアンアンアンアン言う声もたぶん男だ。
その声と肉を叩きつけるようなパンパンって乾いた音が響いてた。
思わず、オレは顔を引っ込める。
心臓が爆発するくらい速い。
頭の中にはモリヤ ナギの顔しか浮かばなかった。


ま、まさか・・?
まさか、あの二人じゃ・・!?

オレはどうしても確かめたくって、もっと近くで見るために舞
台の横から二階のギャラリーへと上がった。
猫を抱いたまま(逃がすの忘れた)這うように進む。
声が一層近くなった所で、そっと見下ろした。

そして。
仰向けに顔を振るのは、夢にまで見たモリヤ ナギの顔だった。
イッキにオレの股間が起ち上がった。
それが猫の足に当たって、軽く後ろ足で引っかかれた。
「イテテ・・ッ」
オレは猫のコトも忘れて、とにかく一秒も見逃すまいと目を凝
らす。
涙を流しながら体を揺さぶられている姿はそこら辺のエロビも
敵わない色気に満ちていた。

すげぇ・・・!!
すげぇエロい・・!!

男のくせによがって、股開いて、挿れられて・・・!!
オレは、モリヤ ナギが弾ける瞬間を見逃さなかった。
少量。
真っ赤な先端から噴き上げ、自分の顔にまでその飛沫を飛ばした。
それから、ぐーっと中から押し出されてるような射精だった。

すげえぇ、エロい・・・!!

ゴクッと喉が鳴った。瞬間。
ワタヌキタツトの顔がコッチを見た。
慌ててオレは顔を引っ込める。
その拍子に、抱いていた猫が暴れて、オレのビンビンのチンポを
数回引っ掻いて飛び出して行った。
ニャー!って怒りながら。
でも、そのおかげでワタヌキは、猫か、って言った。

助かった。
いや、助かってなかった。
あの・・・くそデブ猫〜〜〜〜!!!

あの猫の数回のタッチのせいで、オレのチンポが大爆発しちまってた。
べっとりとヌメる感触。
その股間を触るのも恐ろしかった。

チクショーーーー!!!制服・・!!こんなザーメン臭え制服クリー
ニングになんてだせねえ・・!!!

オレこそ仰向けになって、未だビンビンのチンポに泣きたくなった。

体育館の中は、フィニッシュに追い込まれてるモリヤ ナギの声がしてた。

チキショウ・・・!!
モリヤ ナギめ・・・!!!
絶対、一回しゃぶらせてやる・・・!!
(一回でいいからしゃぶって欲しい・・・!!)



そうして、チヅカナツトは志望校を上稜高校へと決め、受験を再出発した。





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