ワタヌキタツト。

高校サッカーのキング。
常勝、名門上稜高校のエースストライカー。

オトコ。

短髪。吊り眼。結構カッコイイ。

直に会うまではソレだけの存在だった。
結局は、雲の上のヒト。
一年のサッカー部員だけで70人以上もいる。
そんなオレの位置。

それが、どうした事か。
「モリヤ。寝癖ついてる。ダセっ」
理科室からの帰り、階段を降りていると後ろから小突かれた。
ニヤニヤと笑う知らない先輩二人と、ワタヌキだ。
新歓の後、北村に付き合ったおかげで、しっかり覚えられてしまった。
「イッテ・・。」
「あ、ちわース。センパーイ、見ましたヨ。昨日、告られてたでしょー」
北村がさっそく纏わりつく。
それがちょっと、ちょっとだけムカつく。メチャメチャ尻尾振った犬みたい。
一瞬、綿貫龍斗の眉間が寄る。
4階で俺達は右へ、ワタヌキ達はそのまま下へ降りていく。
これだけのすれ違い。
「じゃーな」
「うぃース」
オレはペコっとだけ頭を下げた。
「っと、先、行って」
仲間に手を振って、ワタヌキが戻ってくる。 北村は気づかないで先を歩いていた。
グッと二の腕を掴まれて、引っ張られる。廊下の陰。
「今日ヒマか?」
また、あの眼で見つめられる。
一度落とした瞼。そこに再び現れる強い瞳。
「ヒマ・・?部活アリマスヨネ」
「さぼれよ」
「嫌デスヨ」
「・・・ったく。じゃ帰りな」
押し付けられる感触に、ギュっと眼を瞑った。
掠るように耳に触れた唇。
確かに触った。
信じらんねーーーーー!!
周りには内緒話してたくらいにしか見えなかったかも知れない。
だけど、事実、感触がある。
アイツ、本気だよ!?
あの眼、怖えーんだよ!めちゃくちゃ発情しやがって!!
何がさぼれだよっさぼったらどうする気なんだよッ
ああ、もう心臓がウルセーー!!


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