中学の頃お年玉で揃えた大型の水槽には、い
つの頃からか赤い魚しかいない。
フワフワと彼等は漂い、生命のごとく泳ぎ廻
ったりはしないで、ただ、そこで、そうして
いる。
その中でコポコポと生まれる泡が、生まれて
は、消えていく。そのスピードに見入らずに
はいられない。
消えるために急いで上る。
死ぬために生まれる。
生まれるために死ぬ。
その繰り返しを当たり前のようにモーター音
が促す。
消える泡の数を834まで数えたところで、
妙な気分になった。
頭がイカレテル。トランスの一歩手前。
目の前にある全てが偽者に見えた。
真っ赤なはずの魚達も、少し薄く見える。
体に薄い膜が張られて世界が僕から遮断され
た。
永遠に時間が止まって、ついに僕は全ての世
界から断絶された存在になってしまったと、
少しだけ、少しだけ嬉しくなった。







僕は、松永しゅう。





「シュウ」
薄暗い一階の廊下。
僕の名前を呼び止めたのは、カネダジュンヤだった。
人当たりのいい笑顔を振りまきながら、軽く手を上
げて、近づいてくる。
「シュウ、一緒に帰ろうぜ」
「先輩、部活は?」
「休み」
「ウソだ、サボリでしょ」

僕の時間が前にも止まった事がある。

先輩は、僕を三人目だと笑った。

オマエが目の前にいたからだと笑って言った。

僕のズボンの股に手を入れられて、窮屈な中で動か
されて、僕は震えた。

入学して3日目の事だった。

入学式に、初めて見て、触れて、声を聞いて。
少しだけ、気が引かれていたのは嘘じゃない。
だけど、自分で答えを出す前に何もかもをすっとば
して、先輩は押し入って来た。
僕も初めてなんかじゃなかったけど。
会ってすぐにレイプされるなんて予想もつかなかった。


初めて挿入されたのは中3の時。
面白半分に、クラスメートに触られて、勢いでシて
からは、オモチャ扱いで、何人かとするのにも慣れ
てしまっていた。
”オマエもヤレよ”と圧し掛かかってきた相手が僕
の親友だった時もあった。
ソイツは、こう、ほざいた。
”オレ童貞なんだけど”



僕がどんな分類の人間か、きっと先輩にも見えていた
んだ。
見えるヒトには見える。
それをうまく見分ければ、オイシイ蜜にもありつけ
るという事を知っている人種が世の中にはいる。

結局、僕は搾取される側に分類されているのだ。




「シュウ、お前、コレ好きだって言ってたろ」
先輩はサブバッグから真四角のジャケットを取り出す。
そこには、確かに自分が好きなミュージシャンのロゴ
が張り付いている。
「あ、それ、先輩持ってたの?」
「いや、買い物行った時に見つけて買った。開けても
いない」
先輩は、ニヤリと笑ってソレを掲げる。
「・・・・・」
続きはわかってる。

「うち、でいい?」
「どこでも」
先輩が柔らかく笑う。
僕がその顔を好きなのは本当だ。


先輩が僕の名前を呼びながら腰を振る。
僕はそれでカンチガイする。
カンチガイして、泣いてしまう。
「先輩、愛、してる、先輩、愛して、る」
「シュウ。シュウ。シュウ」
今、時間が止まればいい。
今なら、先輩を誰にも取られない。
僕だけと繋がって、僕だけを呼んでくれるから。
だけど、時間が止まるのは僕の方だけ。
先輩の時間は、僕を置いて、どんどん進んでいって
しまう。

「先輩・・・」
目が覚めれば、一人きり。
まるで夢でも見ていたような喪失感。
だけど、フと上げた視線の先に先輩のCDが置かれて
いた。
それを手にすると、その下から先輩の字が表れる。
”プレゼント。明後日、また来るから、オレにMDに
とっといてくれ”
僕はほくそ笑む。
僕がMDに落とさなかったら先輩はそのまた次の日も
くるかも知れない。
小さな企みで僕の胸は一杯になった。




次の日の昼休み。
その電話が鳴るまでは、たぶん僕は幸せだった。
他人と比べると、どうしようもないような小さな幸せ
だったかも知れないけど。
だって、先輩が僕にお仕置きをするために家に来るん
じゃないかなんて事で喜んでるんだ。到底フツウの幸
せとは呼べないと思う。
「モシモシ」
『よう、久しぶり』
「誰?」
『ヒデェな、オレの事忘れちゃったってのかよ。2ヶ
月前まであんなに仲良くしてたじゃねーか』
あ、と思い出す。
僕の親友だったヤツの声だ。
すっかり忘れてたよ。
僕の脳内は今は先輩の事しか入らないから、すっかり
コイツの情報はごみ箱へ入っていた。
「ヨシヤ」か。
『なんだ、マジ忘れられたかと思ったぜ』
「忘れてたよマジで」
一応言ってみたが相手は難なくスルーした。
『お前さ、付き合ってる男がいるだろ』
一瞬考えてみる。
もしかして先輩の事だろうか。
僕達がそんな風に仲良く見えたんだろうか?
ちょっと驚いた。
『オレ達見たんだぜ、隠したって無駄だよ。しっかり
調べついてんだからよ』
ヨシヤの口調と話が暗雲化してくる。
『なぁ、そんなヤツ放って置いて、またオレ達と遊ん
でくれよ』
いらなくなったオモチャも、ヒトに取られると惜しく
なるモノだっていう。
僕を輪姦した連帯感が先輩を見た事で呼び覚まされた
のかも知れない。
「・・・もし」
『ん?』
「断ったら?」
『お前らの写真バラマクだけだ。もち合成だけどな。
バッコバコ、ヤッテる派手なヤツ。お前がそんなに男
と付き合いたいんだったら、オレ達が相手してやるか
ら、あんな優男やめちまえよ。な?シュウ』
冗談じゃない。
オトコと付き合いたいから先輩とシてるんじゃない。
僕が惹かれた先輩だから、シてるんだ。
あの人じゃないヤツとなんてシたって気持ち良くなん
かないんだ。
それがわかったのは、先輩が僕をレイプした日だった
けれど。
『どうする?お前んちの近所に配ってやろうか』
「わかった。どこ?」
『はは、さすが、シュウだ。放課後に遊びに行ってや
るよ。シラカワも手合わせ願いたいらしいぜ』
シラカワは、唯一の同中出身者だ。確か柔道部。
僕はどこまでもコイツらのオモチャにされる運命なのか。
搾取される側だって自覚があっても、意識の許容はそう
うまくはいかない。
切れた携帯の画面には先輩の後姿が貼られている。
そっと隠し撮りしたモノだ。しかも人の間から撮ったか
ら、ピントもあっていない。
たくさんの背中の中の一つ。僕だけが見間違える事の無
い先輩の後姿。
「先輩」
僕と先輩の写真。
僕はいくら汚されても構わないけど、本当の写真でも無
いのに、先輩の裸が貼り出されたりしたら、僕が落ち込
む。先輩のセックスを知りもしないクセにソレをばらま
くなんて、許せない。
バッコバコ?
バカみたいだ。
先輩のセックスはそんなもんじゃない。

僕は既に授業が始まって静かになった校内を、すっかり
フテて、保健室へと向かった。
バカバカしい遊びにいつまで付き合わなければいけない
んだろう。
階段を一つ下りて、足が止まった。
「先輩」
せめて先輩の顔だけでも見ておきたかった。
そうすれば、アイツらの顔も先輩の顔に置き換える事が
出来るかも知れない。
僕はそっと先輩のクラスを覗いた。
先輩は窓際の席で、肘をついて黒板を見ていた。指先で
ブラブラとシャーペンが揺れている。
たぶん少し、イライラしているサインだ。
「クシュンッ」
しまった!と僕は床にしゃがみ込み、そっとそっと、そ
の場を後にする。
やっとの思いで保健室に行くと、保健医のおばさんは、
友達らしい人と懇談中だった。
「あら、また来たわね。マツナガ君。ほら、お菓子食べ
なさい。いい時に来たわね〜」
保健室の常連である僕には、この誘いは絶対断れなかっ
た。
「へ〜、かわいい子ね〜!本当に男の子か調べたくなっ
ちゃうわ」
コーヒーカップを手にしたジャージ姿のおばさんが顔を
近づけてくる。
たぶん、体育科の先生なのかも。
「でしょう!?私も本当驚いちゃったもの。身体測定の
時なんて大変だったんだから。馬鹿なガキがやたらとこ
のコの事触りたがって。本当カネダ君がいなかったら、
収集つかなかったワ」
「あ、生徒会のね」
「そう。イイコよ〜。カッコよくて」

そんな事、あっただろうか・・・?
確かに先輩が話しかけてくれたような気もするけど。
とにかく、曖昧に相槌を打ちながら、僕はボンヤリと
その時間を過ごした。

鐘が鳴り、ジャージのおばさんが出て行くのと入れ違い
に、そこには先輩の姿があった。
「おいで、シュウ」
「せ、先輩!」
慌てて出て行く僕の手を引いて、先輩は無言で歩いた。
廊下の突き当たり、生徒会室と書かれた重厚なドア。
中に入ると、先輩はいきなり僕を押し倒した。
「先輩っ」
「今日のシュウは悪い子だな。授業をサボってオレを
見学か?それとも見張りに来たのか」
ちがう。
僕は頭をブンブン横に振った。
「気づかないとでも思ったのか?オレが会いに行くまで
なんで、我慢できない?」
先輩の手にカッターが握られていた。
あ、切られる。
刃先がシャツを掠めた。と同時、ボタンが弾け飛ぶ。
それを5回繰り返し、全部のボタンを切り落とした。
下半身も靴下以外取り去られる。
「シュウ。お仕置きだよ」
先輩は僕の胸に顔を寄せて囁いてから、僕の乳首を噛んで、
引っ張る。
「アァーーー!!いっ痛いっ先輩、イタ、い」
「かわいいな、シュウ。いっぱい噛んでやろうな」
もう一度。
「アアア!!イ、ヤ、イタ、いっいた、い!!」
「すぐ痛くなくなるの、わかってるだろ?お前、ここ噛ま
れるの好きだもんな?」
もう一度、くる。
と思ったら、僕は思わず、先輩の肩を手で押してしまって
いた。
「あ」
「この手は?オレじゃイヤだって事か?」
「ち、違う、違う、先輩、だって、痛くて、」
僕の声は震えていた。言いながら涙が溢れてきた。
それを先輩は笑って指で掬うと、言った。
「オレがイヤじゃ仕方無いな」
先輩は一旦、僕から離れると並んだソファの後ろの棚から
カバンを一つ取り出した。そこから出てきたモノに息を呑む。
「なら、今日は、これで我慢してくれ。オレより少し小さい
から物足りないかも知れないが、オレがイヤならしょうがな
いよな?」
先輩は真っ赤なソレを持って僕の膝の間へ入る。
「ヤだ・・先輩が、いい。僕、やだっあ、やめて、先輩っ」
僕のソコはまだ硬いハズなのに、先輩が塗ったジェルのせい
で、ヌルヌルとソレを体内に埋め込まれてしまう。

この後が怖い。

先輩はニヤリと笑って、一人掛けのソファへ足を組んで座る
と、手にしたリモコンのスイッチを入れた。
「アウ!」
体内からの振動が全身の力を奪う。操り人形の糸が切れたよ
うな僕の体。
先輩は、何度も何度もスイッチを入れる。
カチ、カチ、カチ、カチ、カチ。
その度に僕の中からモーター音が漏れ、僕は体を跳ねさせた。
それにだんだん体が慣れてくると、僕の体は刺激が足りなく
なってくる。
今、先輩が自分でシろって言ったら喜んでヤる。
たぶん、このオモチャを抜き差しするのだって自分でヤるか
も知れない。
ダメだ。と思っても、手が自分のチンポに向いてしまう。
もう、我慢が出来ないと、両手で掴んだ時、バイヴのスイッチ
が入りっぱなしになった。
「あ、あ、あ、あぁ!!」
代わりに、先輩が僕の手を拘束する。頭の後ろで、両手首をベ
ルトで締めると、今度はバイヴも引き抜いてしまう。
「ああーーー!!」
引き抜かれる刺激で僕のチンポは少しだけ白く弾けた。
「先輩っ挿入れて!オネガイ、挿入れて!僕ダメになっちゃう、
先輩、オネガイ!」
「わかってる。シュウ。お前はかわいいな」
先輩は優しく笑って僕の目尻にキスした後、唇を繋いでくれた。
だけじゃなかった。
口付けしながら、さっきよりも大きなオモチャで僕を一刺しに
する。
ジュクジュクと熟れた肉が収縮して、僕はまた少しだけ弾けた。
「ああ、先輩、もっと、シて」
「イイ子だな、シュウ。これで二回イケたら、ちゃんとオレの
をやろうな?がんばれよ?」
僕は潤んだ視界で先輩の見えない顔に向かって頷いた。
先輩はまた元のソファに座ってリモコンを握った。
カチ。
「ひっ」
さっきのよりも大きな先端がうねうねと動いた。
スイッチが入る度に飛沫が飛んでいる気がする。
もっと、ずっとスイッチを入れていてくれたら、簡単にイケるの
に。
もう、一回分出たんだろうか?
それすら分からない。
もう意識も朦朧としてきていた。






その時。ガチャリ。

ドアの開いたような音がしたような気がした。
けど、僕にはよく分からなかった。
どんどん意識が沈んでいっていた。











「わ、・・・」
ドアを開けたのはガタイのいい一年(シラカワ)だった。
「何見てる?使用中だ、出て行け」
その間にもカチカチという音がモーター音と共に響いていた。
「えっオレだって鍵を借りてんだ、アンタが出て行けよ」
偶然にもシラカワは知り合いの先輩からこの部屋の鍵を借りてい
たのだった。
「貸した覚えはねーぞ。誰に借りた?カタセか?」
「あ、その・・」
「あのヤロー又貸ししやがったな。出せ、オレの鍵だ。カタセに
はペナルティー喰って貰わなきゃな」
すると、その男の背後で声が上がる。
「なんだよ、話違うじゃん。じゃ、どうするんだよ」
カネダは立ち上がると、そいつの首を掴んで部屋の中へ転がした。
モーター音が入りっぱなしになる。
途端に、シュウの声が高くなった。
絶句して床に転がったのは、ヨシヤだった。
拘束され、バイヴを突っ込まれて仰け反るシュウを呆然と見つめる。
「なんだ、テメェは。他所様の家へ上がって挨拶も無しか」
その腹を蹴り上げた。
「ウッ」
くの字になったヨシヤにさらに蹴りを入れる。
「ヤっちまうぞ、テメェ」
「やめろ!」
シラカワがカネダの後ろから抱きついた。
それをカネダはシラカワの腕が廻る前に回転して、シラカワに飛び膝蹴り
を決める。
シラカワはうめき声も上げずにダウンした。
「空手部のカネダジュンヤだ。覚えておけ」
カネダはヨシヤの耳元で囁くと、ヨシヤのベルトを外した。
「や、ヤメて、くれっスミマセンッスミマセンッもう、来ませんから」
涙声でヨシヤが訴えたが、そんなモノで譲歩するカネダでは無かった。
思いっきり、血でヌルむ程犯してやる。
そう思った時だった。
「あんあ、あ、アーー!!、先輩っ先、輩っ僕、僕、イ、ケた、よぉ。
ああ、もうダメ、先輩シて、先輩ので、シて」
シュウがドロドロと精子を吐き出して、叫んだ。
「しょうがねーな・・。お前は後だ」
ヨシヤの足を放り出すと、シュウの膝を開いて、カネダは極太バイヴ
を抜き、勢い良くチンポを突っ込む。
「ああああーーーーー!!!」
一突きで、シュウのチンポは白液を撒き散らした。が、カネダは構わず
ピストンした。
ビチ!ビチ!と肉がぶつかる音が響いた。
「シュウ、シュウ、シュウ、シュウ」
「あ、あ、あん、先、輩、愛、し、てる、愛、し、てる」
カネダはつい夢中になってしまっていた。
その間に、ヨシヤとシラカワが逃げ出していた事に全てが終わってから
気づいて悔しがったのだった。



世の中、上には上がいる事を二人は知った。

その後、シュウの携帯を、ヨシヤは二度と鳴らさなかった。



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