さっきから、また同じコト繰り返してる。
もうカラのカップ二度も口に運んで、舌打ちしてる。
バカなオレ。
勝手に待ってるクセにイライラして。
アイツと約束したわけじゃねーのに。

こんな気持ちのまま、会ったってナンも解決しない。
そう、わかってても待たないではいられない。
その位い。
焦ってる。
焦り捲くってる、オレ(ツヅキ タカヒサ)。






駅前のマック。
ガラス張りの向こうはオレンジ色。
そろそろアイツがここを通る頃。

さぁ、オサライしておこう。
この二日に起こったオレの災難を。






災難1。オレとオマエが好き同士じゃないコト。

オレ達は同じ様に、相手に恋して、大好きで、惚れてて、
なのに、オレ達はそれぞれ違う方を向いてて。
なぁ、同じ気持ちわかってるクセに、オレをシカトする
なんて、ヒドクねぇ?
オレだって、オマエのためだったら、たぶん。
クサイ事言いたくなんかねーけど、オマエのネガイなら
なんだって叶えてやる。叶えてやれる。
なのに、オマエはそんなオレ見捨てて走ってくんだよ。
オレの事なんかマジで視界から追い出して、キレイさっぱ
り頭の中から消せるんだ。
サイアク。

やめたい。
もう、オマエなんか好きでいんのバカみてぇだもん。
どんなにオマエに好きになってもらいたくたって、やり方
も知らない。
オマエってどんな事したってオレを見ない。
いや、違う。
アイツしか、ワタヌキしか見ないんだよ。
ワタヌキタツトしか、入らせない。
オレはその他、大勢と何も変わらないザコキャラで。
なぁ、このゲームはいつ終わる?
オマエはもうボスキャラに出会っちゃったんだろ?
なら、もうオワリにして、オレの方を少しでも見てくれヨ。
いつまでも勝てないボスキャラ相手に粘るなよ。

・・・・・って、オレもか?
でも、ヤエダだけは冗談じゃねえ。
あのクソガキ!(注:同い年)
誰がオマエのためになんかオマエ助けるか!
モリヤの頼みだったから、あのクマをノシてやっただけだ。
それを、マトワリつきやがって、引っ付きやがって・・!






災難2。ヤエダに取り付かれる。
 ・
 ・
 ・
 ・
オリエンテーリングの山中。
クマを倒したオレに喜びの抱擁で襲ったヤエダ。
「モリヤーーーー!!テメ、ふざけんな!」
猛ダッシュで駆けてく背中にオレの血が一気で下がる。

シンジランネエ・・・!!!アノオトコ!!

「ありがとう、ツヅキ!オマエってすげー強いんだな!」
オレの怒りは頂点に達していた。
ギュウギュウ抱きついてくるヤエダ。
「オイ、放れろ。コロスぞ、テメェ」
冷め切ったアタマ。冷え冷えとしたココロ。
それが、逆にオレを強くさせた。
「え」
ヤエダの脇腹に正確に入る正拳。
フっと意識を失い、倒れるヤエダ。
オレはその体に続けて拳を打ち込みたくなる気持ち抑えて、
歩き出した。
「モリヤ〜!あのヤロー・・!」
オレを置いて行きやがった。
ヤエダに捕まったオレに、・・シアワセにって言いやがった!
許せねえ・・。
オレの気持ち知ってるクセに、アイツは・・!

わからせてやるヨ。
オレがどんなにオマエ好きか。
ああ、見せてやろうじゃん。




だが、災難は終わってなかった。その次の日。
ヤエダが昇降口に立っていた。
オレを見つけて手を振る。
オレは見なかった事にして、その横を通り過ぎようとした。
「ツヅキ、待ってた。ゴメン、もしかイヤだった?」

わかってんなら、話掛けんナ。

オレは、チラとだけ視線を送って、靴を脱いだ。
「オレさ、オレ、自分がこうだって気づいてからゼンゼンいい
事なくってサ。でも、オレ、昨日初めて、さ。え・・と。ツヅ
キに・・・・。ツヅキに出会うためだって思えてっ」

ギョっとする。

なんだコイツ・・。
こんなトコで告りやがって・・、恥ずかしくねーのかよ?
しかも、勝手にオレを運命の相手にするな!
こっちはナ。

「メーワク」
オレはメガネ越し目と目合わせて、マジで言ってやる。
こういうのはバッサリ切っておかないと、ヤバイ。ヤバイ奴に
なりかねない。
ヤエダは真っ赤になった顔で、ソッカ、ソッカって、イインダ
って笑った。
笑って、急いで歩いてく。
少し見送ったヤエダの左手が目元に上がる。

舌打ちしたくなる。
見てなきゃ良かった。
男のクセにすぐ泣きやがって・・ウザ。


マジ・・・・ウザいんだよ。

だけど、その背中が体育館の方へ消えるまで見てた。
オレがした結果がソレなら、ちゃんと見ておくギムみたいのが
あるように感じて。
あるいは、ただの好奇心だったのかも知れない。






なぁ、モリヤ。
オレは、ヤエダと一緒なのか?
オマエからしたら、オレってウザくて恥ずかしいヤツ?
消えてくれって思うようなキャラ?

それって、ツレーよ。
オレってなんなんだろ。
なんで、オマエ好きになったかな?
好きなヤツに嫌われるために、恋してんのかな?
んなマゾじゃねーのに。
なぁ、どうしたら、オマエ、キライになれんの?
オマエを好きじゃなくなりたい。
このキモチは少しシアワセで、後はザンコク。



ごめんな。ヤエダ。
ヤツアタリだ。
自分を見てるみたいで、イラついた。
イラついて、傷つけた。
もっと優しくだって断れたのに。









モリヤ、全部オマエのせいだって言ったら、オマエ怒るかな?









そして、今日。
災難3。それはアキラメの悪い自分。
これは災難っつーか、ジゴウジトクってやつ?




珍しく掛けられた声に、上がる顔。
「ツヅキ!あの後、どうなったのお前ら」

暗転。

オレはサ、モリヤ。
オマエに、オハヨ言われるだけで一日いい気分でいられるオトコ
なんだぜ?
それを、オマエは。
オレを殺したいんだな、きっと。
オマエにはわかんないんだな。こんなオレのキモチ。
オレはバカバカしく笑った。
「なぁ、モリヤ。オレもサッカー部入ろうかな」
「ハ?」
「オレがサッカー上手くなったらサ、ちょっとはオレ、見てくれる
気とか出る?」
顔が、口が歪んでく。
イヤな笑み浮かべてるって自分でわかる。
モリヤの顔も、イヤな顔になってく。
やめとけって、これ以上言うなって声がする。
わかってる。
コイツ傷つければオレだってイタイ。
だけど、このバカに、どうすればわかってもらえんのか、見当もつか
ない。
「なら、メガネやめろって言ったらやめんの、オマエ」
凍りついたようなモリヤの目。
突き放した冷たい口調。
オレは心臓、貫かれる気分。
「・・・やめたら、見てくれんの?相手してくれんの?」
見つめ続けるのも怖くなる目。
そんな目で見つめられてたら、死にたくなる。
「オレがそんなコトでヒト好きになったりキライになったりすると
思ってんだ?」

思ってない。言ってみただけだ。
だから。
だから、頼むからその続きは聞きたくない。
言うな。

「オレはワタヌキタツトだから好きなんだ。どんなにオマエがセン
パイ真似したって好きになんかならねえ」


もう、たくさんだ。
もうやめてやる。
こんな恋なんかクソ喰らえだ。

「悪かったな。こんなバカが相手で」
モリヤが言って、去る。

なんで、・・・アイツが謝んの?
悪かったって?
どういうイミ?
・・・・オレを上手く振れないってイミか?
じゃあ、さっきのもワザと?オレがイヤな気分になるってわかってて?
オレがドンゾコの気分になってオマエなんかもう好きでいたくないって
思うように・・?わかってて?

目が滲む。
瞬きがうまくできない。
オレは校舎の壁に寄り掛かって、メガネを外した。ボヤケた世界が10
倍ボヤケる。

モリヤも考えてる。
どうすればオレがモリヤをキライになれるか。
なんだよ。オマエ。何様だよ。
フレばいいんだよ。オレみたいに。ヤエダに言ったみたいに。
キツク、切ればいいんだよ。
そしたら、さっぱり、すっぱり忘れられる。
そうだろ?

「ツヅキ・・」
振り向いて、ヤエダがいた。
「ゴメン・・。元気出せよ、じゃ」
俯いて、早足で通り過ぎてく。
たまたまかも知れない。
持ってたノート。
ここを通ろうとして、ヤな場面に遭遇。
でも、あんまりカワイソウなオレに、お情けのコトバ?

チガウ。
どんなにキライだって言ったって、すぐ忘れられるキモチなんかじゃ
ない。
キツク言えば、忘れられる?
そんなワケない。
こんなにココロ締めてるキモチが、イキナリなくなったりしない。

モリヤもヤエダも、そんなコト、知ってるんだ、とっくに。

何だよ。
なんなんだよ。
その余裕は、どっからくんだよ?
なんで、オレのコトまで考えんだよ!
イライラする。
イライラする。
イライラする。



あー、モリヤ、オマエがここにいれば、全部どうでも良くなるのに。





ここまでは、オレもかなりセンチで落ち込んでた。
この着信が鳴るまでは。


開いた携帯。
今、一番聞きたくない声。
『よ。オマエ、彼女できたんだってな。良かったな〜。オレもホッと
したぜ』
「ワタヌキ・・」
『サンを付けろボケ』
今。
オレは限界まで人間の情について考えていたトコロだ。
もうこれ以上はないってくらい、感情というものについて考えていた。
この疲れ切った場面。
『ナギが喜んでたぞ。これで解放されるって』

「・・・カイホウ?」
思わず、噴出す。
「そうだな。もう、いいや。もう。・・・アンタの目の前でヤラせて
くれたら、オレも、モリヤにちょっかい出すのヤメルワ」

ブツッ
携帯を投げ付けたい。
強く握り締めて、もう一度開く。電源を落として、ケツにしまった。
もう、ハラは決まった。
あとは行くだけだ。
行き着くとこまで、行ってやる!







オレンジ色の空。
オレはモリヤを待った。
このサイアクな恋にサイアクなピリオドを打つために。

頃合を見て、マックを出た。
それから少しして、駅から出てきたアイツの後ろに付く。
入れそうな路地のあるところで、後ろから抱き締めて、引き込んだ。
「モリヤ、ダイスキダ」
棒読み。
なんて冷めた告白。
「つ、づき」
首に廻した腕。
苦しそうに瞑る目。
両腕でオレの腕を掻いた。
「もう、終わりにしよう」
軽く振った膝をモリヤの背中へ蹴る。
イッキに力の抜ける体。
それを力一杯抱き締める。
「ごめんな。痛くして。ごめんな、・・ナギ」
それから、オレは目星付けてた近くのラブホに入った。
まッピンクの部屋で。
ぐったりとしたその体を思う存分抱き締める。
制服がシワクシャになっても、やめられない。
ずっと、ずっとこうしていたい。
ブレザーの中、抱き締める身体が熱い。
モリヤの心臓の音に耳を立てる。
ただ、モリヤの心臓の音だと思うだけでキモチ良かった。
その幸福な時間をどっかで鳴る携帯の音が逆撫でる。
シカトし続けると、今度は間を置かずにオレの携帯が鳴った。
見る気にもならない。
しつこく鳴るソレの電源を落とそうと思って、やめた。
「モシモシ?」
『ツヅキ、キスくらいしたか?』
神経に障る。
「・・・なんで。アンタ、そんなに余裕なの」
『ヨユー?ヨユーがあったら慌てて携帯なんか鳴らすか』
それでもワタヌキの声は笑ってる。
「アンタ・・・・前に言ってたよな。ナギの喘ぎ声、聞かせて
やろうかって・・・」
『・・・・』
「・・・・聞きてぇ?オレの下で啼くモリヤの声」
『ドーテーがモノ言わせてんじゃねぇよ』
「オトコもオンナもアナに突っ込むのは一緒だろ。期待して聞
いててクダサイヨ」
言ってオレは枕元に携帯を放り投げた。

「なぎ」
そっとタイを解く。
一つ一つボタンを外す。
その手が震える。

「ナギ」
モリヤの体を抱き起こす。
自分の胸に抱いて、キスした。
好きだ。
スゲー好き。

視界が歪む。
オレはモリヤを抱き締めたまま泣いた。

デキネエヨ。
オレ、やっぱオマエ傷つけるような事デキネエヨ。
こんなバカやったせいで、オマエも泣くコトになんのか?
ワタヌキにバレちまった。
オマエ一番それ気にしてたのに。
ゴメンな。

「つ、づき?」
モリヤの首筋に顔うずめて泣いたせいで、モリヤが目を覚ました。
「モリヤ。・・背中、痛くねえか?」
「セナカ・・・?・・イテェかも・・ここ、ドコ?」
まだボーっとしてるせいか、オレが泣いてるせいかモリヤはオレ
を跳ね除けたりしなかった。
「あ、センパイだ」
モリヤが反射的に少し身体を起こす。
「センパイって、ワタヌキの事か?」
モリヤは黙って目を動かした。
「ホラ、今呼んだ。呼んでる」
その次の瞬間。
「ナギ!何処だ!?」
その声は確かに聞こえた。ついでに遠くでドアを叩くような音。
「センパイ!」
モリヤの声で、この部屋のドアノブがガチャガチャと回った。
「センパイ」
モリヤが慌てて起き上がって、ドアの鍵を開けた。
「ナギ!」
「センパイ、騒ぎすぎ。警備員呼ばれるっつーの」
ワタヌキに抱き締められるモリヤ。
だが、すぐにワタヌキはオレを睨みつけるとツカツカと寄って来た。
「後悔するようなコトすんじゃねえ!焦らせやがって」
殴られるかと思ったが、ワタヌキは携帯を拾っただけだった。
「・・・なんで、ここだってわかった?」
「センパイの携帯。最新のGPS付いてんだよ」
モリヤが自分のタイを襟から抜く。
「センパイに持たされてた。オレは心配ないって思ってたけどナ。
オマエって実はヤサシイじゃん」
モリヤは両手を軽く広げてワタヌキに見せる。
「ナンもされてマセン」
ワタヌキが呆れたように笑ってオレを見る。
「キスくらいしたんだろ」
「したかもナ」
オレじゃなくモリヤが答えた。
「ナギ。シメるぞ。」
「冗談だろ。冗談。さ、帰ろ、センパイ」
「何で、オマエ、そんなフツウなんだ?こんなコトされてキレねー
のか?」
ワタヌキが納得がいかないとベッドへ座る。
「センパイ・・・。オレ、本当マジ、センパイがオレを好きで良か
ったって思うよ。オレにはツヅキのキモチわかる。オレはアンタの
事、なんでか好きになって、アンタがオレの事どうとも思ってなきゃ
オレは今のツヅキと同じになってたかも知んない」
「オレを襲うのかよ、オマエが」
鼻で笑うワタヌキ。
「襲ったかもな」
即答するモリヤ。
「・・・ますます許せねーな」
「センパイ」
「かっなり、アタマきた。キモチがわかる?なら、襲われても文句
ねえって?ナギ」
ワタヌキがモリヤの胸倉を掴んで引き寄せた。
その勢いでモリヤは膝をつく。
「オマエ、オレのモンって自覚ねえな?」
「おい・・」
殺気立つワタヌキの肩を掴もうとして、その手を強く叩き落とされた。
「オレはな、ナギ。自分のモンは大事にする主義なんだよ。誰にも触
らせたくないくらいにな」
そのままワタヌキがキスする。
目を見開いたままのモリヤ。
一度、離れてワタヌキが言う。
「目の前でヤッテやろうか」
ワタヌキがオレを見てから、オレの目の前へモリヤを押し倒した。
「ヤだって・・センパイ、マジやめろっン」
モリヤは手を押さえられて、再び二人の唇が合った。
激しくモリヤが顔を振って叫んだ。
「ヤメロ!!テメェ、シャレになんねーんだよっ放せっ放せよ!!」
「マジに決まってんだろ。オマエに教えてやんなきゃわかんねーみて
えだからな。オマエはここで、コイツにヤラれてたかも知れねえって
自覚がねえみてーだからな」
「ヤラねーよ!ヤラれてねーだろうが!放せっ」
「ヤラねえ?スゲー自信だな。ムカつく。オイ、よく見とけよ。目の
前でイカせてやるよ」
後半をオレに聞かせて、ワタヌキがシャツを脱いだ。
その隙にモリヤが体を反転させて、ワタヌキの下から這い出そうとも
がいた。
が、簡単に肩を押さえつけられて、モリヤが呻いた。
「ヤメロッやだっ絶対ヤダっタツト!許さねえぞっこんなコト!!」
「どうせ、コイツにヤラれてたかも知れねーんだ。別に見られてたっ
て構わねーだろ?そういうコトだろ?オマエがキモチわかるってのは」
ワタヌキの手が前に廻ってモリヤのベルトを引いた。
モリヤの声が震える。
「タツト!!」
「ヤメロ!!」
ついに泣き出したモリヤに堪らなくなったのはオレの方だった。
「やめろ。やめてくれ。コイツ、泣かせんなよ。もう、もう二度とこ
んなマネしねえから・・・。やめてくれ・・頼む。頼むから泣かせん
なよっ・・オレが悪かったからっ・・モリヤ、ゴメン。ゴメンな」

オレ、オマエのシアワセこわすとこだった。

オマエがワタヌキと別れたら、オレ、スゲー嬉しいと思うけど、オマエ
は、泣くよな。オマエはスゲー悲しむよな。そんなオマエ救える自信な
んかオレには無い。結局オマエを救えるのはオマエが好きな相手だけな
んだよ。
それは今のオレとイッショで。
オレを救えるのはオマエしかいないのとイッショで。

ワタヌキが手を止める。
「ナギ・・・泣くな」
ワタヌキの手がモリヤの頭に乗る。
クシャクシャと撫でるその手は1分前のモノと同じ手だ。
ソレを見つめてるとワタヌキがオレを見た。
「オレは本気だ。オレはオマエ次第でナギを酷く扱うかも知れない。
それがイヤなら、コイツを泣かせたくないなら、イサギヨク手を引けよ」
それから息を吐いて付け足す。
「でなきゃ、マジでシメるだけだ」

シメる?ってオレを?
たぶんオレが秒殺で勝つよ、マジなら。
でも、たぶん、絶対。それはモリヤが望まない。
モリヤが泣くようなコト、オレはもうする気ない。

お手上げ。

「元々、オレの手元にはいないのに、人質取られてるみたいだぜ」
オレはメガネ外してモリヤの前へ投げた。
「やるよ。・・・持ってて、モリヤ」
情けない顔、見せないようにオレは立ち上がって振り向かないで部屋を
出た。

歪んでボヤケた世界。
暗く紅い廊下。
世界の終わりに見えたシーン。
何も見えない世界。
でも、オレはオマエだけ見えてる。
出来るだけ、離れて見よう。
少しずつ。
離れて行かなけりゃ。








オマエのシアワセ祈って。



























































「本気で、オレヤル気だった?」
ガラついた声でナギが聞いた。
見下ろすと、寝たまま、両手で目の前をクロスさせた。
「オマエがアイツ庇うからだろ」
「庇ってねえ。本当にキモチわかるって思っただけだ」
「まだ、言うか」
「だって、そうじゃん。オレはたまたまアンタ好きになったけど、
そうじゃなかったら・・・オレらどうなってたと思う?」
「どうにも」
「少しくらい、考えろよ」
「簡単だろ。何回出会ったって、チガクたって、オレはオマエ抱く。
たぶんもう誰も好きになれねえ気がするから」
「・・・、なんなの、アンタってさ」
呆れた笑い声。
「センパイ。好きって、スゲーコトだな。イミフメイ。」
「ナギ、オレだけだって言えよ。つーか言わなきゃ殺す」
「脅迫かよっなんか、わかった。わかってきた。オレは本能でアンタ
を選んだのかもな。アンタは敵に廻しちゃイケナイ相手だ」
「だから、付き合ってんのかよ・・。サイテーだな」
寄せる唇。
甘く噛んで舐める。
「そんだけ?」
「欲しかったら、オレと生涯添い遂げると誓え」
「そんなナゲーお祈りしたコトねえよ」
「オマエ、たまに可愛くない時あるよな」
でも、唇は合う。
「・・・好きだよ、センパイ」
目元を赤らめるナギ。




「好きだよ」

ソレは、オレをホッとさせる呪文。
ナギ、泣かせて、ゴメンな。

オマエに嫌われたら、生きていけないのは、オレの方だ。
ツヅキなんかより、ずっとビビッてるって、オマエ知らないだろうな。

「もっと言えよ」
抱き締めて請う。

「あのな、・・・好きだってば」
呆れた声。



祈ろう。

いつまでも二人を何も別つ時が来ない事を。







back

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送