「コウキから電話がきた」

センパイはそれで全てが通じると思ってるのか、
玄関へ向かう。

「ちょっと、待てよ、センパイ」

コウキ。
センパイの弟からの呼び出し。
この時だけは、どうしてか、オレの声がセンパイ
に響かなくなる。
まるで、何かの呪文でも掛けられたようなセンパイ。
一つも振り向かないその腕をムリに引いて顔を合わ
せた。

「何だって?何て言ってた?」
少し力の入った眉間、深刻そうな顔。
一瞬、躊躇して諦めたように口を開く。
「母さんが、会いたいって」
「嘘だろ」

決めつけたセリフ。

「・・・わかんない・・・」
「嘘に決まってんだろ」

なんで、わかんねーんだよ。
あのクソ弟が、そうやってアンタ呼び出して、何て
言ったか忘れたのか?

「オレ、行くから」
「・・・行くな」

静かに命令する。
センパイは肩ビクつかせて、止まる。ドアノブに
掛かった指。
後ろから、剥がす。
後ろから、抱きしめる。

「行くな」
「・・・・うん」

抵抗せず、センパイは玄関から離れた。
オレに手を引かれて、次。
ベッドへ向かう。
センパイを押し倒して、オレは猛獣のようにノド元へ
噛み付いた。
センパイが鼻を啜る。
両手で顔を隠すように、泣き出す。
微かな泣き声を聞きながら、オレはハーフパンツのゴム
を引き下げた。





イズミサワコウキがセンパイの携帯を鳴らしたのはこれで
2度目だった。
勝手に一人暮らしを始めたセンパイへの家族の反応は冷や
やかだった。
”すぐ、泣いて、戻ってくるだろう”
金銭面も含め、センパイの親は、センパイが一人暮らしな
んて出来るハズも無いと見越していたようだった。
家を出るなんて、バカな事を、と。
すぐに、泣き付いてくる、そんな期待と共に、センパイの
家族は、センパイを放り出した。

だが、それから二週間もすると、コウキから話たいと電話
がきた。

待ち合わせたマックの箱。
ついて行ったオレは愛想のいい笑みでアイサツしてやった。
ソレに、コウキは軽く頭下げただけ。

ゼンゼン似てねぇな。キホンの形は一緒なんだろうけど、目
が違うと、こんなにも違うもんか。

センパイがなに?と聞く。
「母さん、頭、イっちっまったよ。帰って来いよ、ケイ」
有名私立の制服姿で、コウキは溜息をついた。
「オレ一人に相手させんなよ。オマエがいねーと、あの女
ずっと、ブツブツ言ってるんだぜ。近所にも、ケイが出て
行ったのは、悪い友達のせいだって言ってる」
チラとオレを見るコウキ。

いい度胸してんな。

紙コップの中身を少し揺らして考えた。
ぶっかけてやろうか・・。

「アキタ、オレ、帰る」
突然、席を立ち上がるセンパイ。
「は?」
一緒にコウキも立ち上がった。
オレは慌てて、センパイの腕を掴む。
「待てって・・。何?帰ってどうすんの?」
センパイは瞳孔開いた目で、わかんない、帰る、と言った。

出てる。
完全に、症状が出てる。
家に帰りたい病だ。

この有効薬は、・・セックスする事・・。
だが、こんなとこでセックスするわけにいかねえだろう。
ここは、「ラスタ」じゃねーんだ。
しかも弟の手前、押し倒すワケにもいかない。
もしかしたら・・一回帰らせるってのも手かも知れない。
だけど、それで、もうセンパイが戻らなかったら?

そんな事を考えていると、さっきとは雲泥のアイサツが耳
に入る。
「今まで、兄がお世話になりました。後日、母とご挨拶に
伺いますので、今日はこれで失礼します。ケイ、行こ」
軽く肘を掴まれたセンパイがコウキの後を付いて行く。
「センパぃッ・・・」
一人マックの席に残されたオレ。
行き場の無い空気。
軽いショック。
暫く、動けないで、頬杖ついたまま固まるオレ。
フと、見ると、センパイの飲みかけのコーラ。
さっきまでここに居た痕跡。

ケイタ・・・。オレを置いてくなんて、いい根性してるヨ。
帰って来たら、覚えてろヨ・・・。
・・・・帰ってくるよな?

なんとなく手にしたコーラ。
隣の席で上がる笑い声に視線が上がる。
と、その一人と視線が合った。
ソイツはサッと向こうを向くと、仲間に囁く。
「アレ、セージだぜ」

聞こえてるっつーの。
イヤな街だぜ。
マックでゆっくりもできねえ。

誰とも知れない顔がオレを知ってるっていうのに、センパイ
の弟には通用しない。
自分で、オレが誰だか、なんて今まで気にもしなかったが。
今、オレは滅茶苦茶、自分の力の無さに悔いてる。
「ラスタ」のオーナーのセージ、じゃない、ただのアキタセ
イジって名前には、何の効力も無い。


これが、兄貴だったら?

笑顔で、一枚名刺をテーブルに滑らせるだけで終わりだ。


チキショ・・・。

オレはコーラの中身、ゴミ箱に流して、最後の雫振り払って
捨てた。
黒い液体。
黒いアワが弾ける。















オレの杞憂は当たったようで外れた。いや、当たったのかも
知れない。
「センパイ」
朝方だった。
ガチャッとキーが開錠される音に、飛び起きた。
フラつく足取りで、暗い中、目を凝らして玄関まで辿りつく。
「アキタ」
エヘってセンパイは右側を腫らした顔で笑った。
「ただいま」
「どうしたんだ、ソレっ」
「・・・コウキに。」

あの、クソガキ・・!!

センパイはオレが思ってたよりも早く帰ってきてくれた。
それは、嬉しいコトだったが、センパイがあの家へ帰って、良
かったのか、悪かったのかと言えば、”悪かった”だろう。
舌打ちが出る。

やっぱり、返さなきゃ良かったっ
なんで、オレはあん時、手放しちまったんだ?


「迎えに来たのは、その(殴る)ためかよ」
センパイは笑ってて、答えない。
とりあえず、リヴィングまで引っ張ってって、オレはタオ
ル探して、水で絞る。
「親、何だって?話、したのかよ?」
ソファの下へ座るセンパイの後ろ。
オレはソファに座ってセンパイの顔を上向かせる。
その顔に冷えたタオルを被せた。

「センパイ・・」
暫く、何も言わなかったセンパイが、ポツリと言った。
「生まなきゃ良かったって・・・言われた」
センパイの曝け出されたノドが鳴る。
「今まで、ずっと、説教されて、・・・家出てまで、そんなに
球蹴りがしたいなら、その足、切ってやるって・・・サ」
震えながら、センパイが続ける。
「オレが居なくなったせいで、近所からどう思われてるかとか
さんざん・・・、受験生のくせにとか・・・つーか、足無くな
ったら、オレ、サッカーの推薦、取れねぇーつーの・・」

笑うセンパイ。

「センパイ」
「アイツ、思いっきり殴りやがって・・チキショぉ・・」
「なんで、弟、アンタの事殴ったんだ?」
「・・・ドアの前、塞いでたんだよ、アイツ・・。それで、な
かなか、逃げらんなかった」
悔しさで、センパイの口が引き結ばれる。タオルの下でたぶん
センパイが目を赤くしてる。
「・・・もう、行くな。命令」
「ん」
センパイが小さく頷く。
「腹減ったな・・・。なんか取ろうか」
「ピザ?」
センパイがクスって笑った。
「やってるかっつーの。ラスタしかないっしょ。シオママにお
ねだりしてみるか」
オレはセンパイの髪を軽く撫でて立ち上がる。と。
「・・・マジで?シオさん・・・店まだやってんの?」
タオルを手にした、目、真っ赤なセンパイが驚く。
「やってる。やってる。余裕でやってるから」
携帯で、ラスタの番号を出す。
「なら、行こうよ。出前なんて悪いじゃん」
「バッカ、その顔で行ってみろよ。それこそ、シオさんが騒ぐ」
「あ、・・そっか」
途端に項垂れるセンパイに、シマッタと思った。
携帯の呼び出し音が途切れるのも構わず、オレはセンパイにキス
した。ただ、触れるだけのキスを数回繰り返して、やっぱり足り
なくて、オレは、シオさんの声がする携帯の電源を切って、テー
ブルに置いた。
抱きしめて、背中を何度も抱きしめて、全部が包み込めない手が
もどかしくって、ギュウギュウ締め付けた。
「アキタ、・・すごい・・・安心する・・・アキタにこうされる
と・・」
「いつだってどこでだって、してやるよ」
「ん・・・。オレ、ここしか、もう、無いから」

せつない。
涙声。

「アキタにしか・・オレ、居場所ないから・・」
しゃくりあげる胸がダイレクトに振動する。
「オレが、守ってやるよ。絶対離れんなよ」

全員、オレが退治してやるよ。
あのクソ家族共を。
とりあえずは、あのクソ弟を絶対殴ってやる。

オレの背中で、センパイの指先に力が入る。
愛しくて、悲しくて、オレはセンパイに口付けた。
震える唇。何度も宥めるように舌で撫でた。

硬いフローリングに押し倒して、センパイのシャツ捲り上げる。
上下する胸に唇這わせながら、オレは綿パンツ、ズリ下げる。
「泣くな、ケータ。」
「ケータ」
「ケータ」
呼び続けた。
センパイの声がオレを呼んでくれるまで。
オレが一番アンタ愛してるから。
それが伝わるまで。
何度だって、口付ける度、アンタの名前、呼び続ける。
「あ、きたぁ」
男の力でオレにしがみ付いて、センパイが吐息でオレの名前吐いた。
「あきた、オレ、オレ・・」
「喋るな」
それどこじゃねーんだよ。
体がどうしようもなく欲しがってる。
アンタっていう熱を。
一つの熱の塊りになりたくて、しがみついてくる体無理矢理離して。
センパイのジーンズ、片足だけ抜く。
「せーじ」
「せーじ」
今度はセンパイがオレを呼ぶ。
「ケータ」
首に腕を廻されて、オレはセンパイの中へ捻じ込んだ。
センパイの軽い悲鳴。
センパイのチンポから先走りに混じった精液が滴る。

「オレのケータ」

突き上げるとセンパイが目を開いて、オレを見つめてた。
舌を絡ませながら、足を持ち上げる。
もっと、もっと深く繋がりたい。
「せーじ」
「せーじ」
「ケータ」
「せーじっ」











オレ。

アンタのために、オレ、生まれたのかもな。

そうだとしたら、神様とかってイキじゃねえ?






それから、オレ達は、何とかと何とかって例えがあるヤツみたいに、
ひっついてて、とりあえずは、オレはセンパイをかわいがる事に専
念してた。あの日の事を思い出す暇も無いように。毎日がサッカー
と、「ラスタ」と、セックスで埋まってた。







そんなある日。
「こんにちは」
丁寧に頭を下げる、有名私立の制服。
放課後の帰り道。いつからそこで待っていたのか、弟が立っていた。
それを見て、センパイの足が完全に止まってる。
「行こ、センパイ」
オレはセンパイの肩引き寄せて、コウキの隣すり抜けた。
瞬間。
「・・なんだ、タメか」
バカにした笑い。
「んだと」
振り向いた目が合った。と、すぐ逸らされる。
「ケイに言ったんだ。年下に遊んで貰ってたんだなぁって」
嘲笑。
「なぁ、昔のオレと一緒じゃん。立場、逆転してたんだな、いつの
間にか」
「何言ってんだ、テメェ・・?」
「テメェにゃ、話ねぇーんだよ!!」
突然コウキが怒鳴った。そのすぐ後、コウキは薄ら笑い浮かべて
しゃべり出す。
「なぁ、サッカーが下手なガキのキモチ、わかんねーだろ?オレだ
って、やりたかった。クラスの殆どのオトコが皆、サッカーやって
たのに、オレだけその中に入れない。ケイはいつだって、仲間に囲
まれてて、あの親父が土日に、いつも土手の練習場覗きに行ってた。
知らなかったろ?あの冷血親父、実はケイのファンなんだぜ」
カラカラとコウキが笑う。
オレとセンパイは足から凍るようなキモチでコウキの話を聞いてた。
「あの頃は母さんもケイ、ケイ、言ってたっけ。この歳になると、あ
のヒトにゃ、サッカーの出来るガキより脳みその優秀なガキの方が、
萌えるみてーだけどナ」
「・・コウキ・・」

イカレテル。

センパイの肩が震えてた。
家族に憎まれる事を一番恐れてるセンパイに、これ以上、こんな話を
聞かせるわけにはいかない。
「オレらにゃ、テメーの泣き言聞くギリないぜ。じゃあな」
と、先へ進もうとしたオレとは逆。
センパイがコウキの方へ近づく。
「センパイッ」
「ゴメンな」
言ってセンパイは、コウキを抱きしめた。
それにオレもコウキも、ド肝を抜かれた。
「オレ、もう、帰らないから。オレ、自分の居場所見つけたから。ゴメ
ンナ、置いてって」


”置いてって”


今、センパイにはコウキの小さい頃が見えるのかも知れない。
泣きながら、付いて行くという弟。
オレ自身、泣いて、兄貴について行こうとした事があった。
帰りの遅い歳の離れた兄。
家が寂しくて、何度も外を覗いた。廊下を歩く靴音に何度も飛び出した。

「ふざけんじゃねーよ!!もう昔の事なんてどうでもいいんだよ!今だ、
今、帰って来い!オレにあのイカレタ女の相手させんじゃねーよ!!」
振り払われた腕を少し上げたまま、センパイが言う。
「・・それでも、オレは、オマエが羨ましいよ。あのヒトはもうオレを
見ちゃいない。久しぶりに帰ったオレに、おかえりでも何でもない。
居たの?ってサ。オレが帰るにはあの家は小さすぎる」
「関係ねー。帰ろ。ケイ。オレに悪いって気持ちがあるんだったら、今
償ってくれ。オレの方があの家を一刻も早く出たかった。それをアンタ
に先越されるとは思わなかったぜ。アンタ、結局母さんに、従順だった
じゃん。家出る根性なんて無いと思ってたのによ」
無理矢理、コウキがセンパイの腕を引く。
「帰らない!!オレはもう、帰るとこは決まってんだ!!アキタっ」

ホイ来た出番!

オレは半身振りかぶって、横から拳振り上げた。エセ・ロシアンフック!
コウキの体は予想以上に軽かった。
足が浮いてぶっ飛んじまった。
「手応え、ねぇー!・・(なんじゃコイツ)」
あまりのコウキのすっ飛び方に、センパイが青冷めて、駆け寄った。
「コウキ!大丈夫か!?」
その手を気力で振り払うコウキ。
「ダイキライだよ!体力バカばっか!警察呼んでやる!」
コウキがゴソゴソと携帯を取り出す。
「ヤメロ!」
センパイがその手を掴んだ。
「いいって。ヤラセとけよ。どうせ無駄なんだから」
エセ・ロシアンフックの繰り出し方を練習しながら二人に近づいた。
「え!?アキタ?」
オレはセンパイを立ち上がらせて、コウキの前へしゃがみこんだ。
「アキタセイジだ。しっかり通報しろよ?たぶん、誰も相手にしちゃく
れないだろうがな。パンチ一発貰っただけで済んだなら、ラッキーだっ
て言われるぜ?これでも、ヤー公の血縁だからな。ただし、オマエは二
度と夜の街では遊べねーだろうな。ま、そんなタイプでもねぇか」

オレは立ち上がると、今度こそセンパイの手を引いて歩き出した。
「アキタ」

フツフツと、湧き上がる嫌悪。

あーーーーーー!!オレのバカ!オオバカ!!
ついに、ついに、オレは自分で、自分の口で、一生使いたくなかった
”コネ”を使っちまった!!恥ずかしいっ
自分で、オレの兄貴、つえーんだぞって、言ったようなもんだっ
チキショーーー!!小学生かよ!

「アキタ・・・。なんで、怒ってんの?・・・」
横には、オレを見つめるセンパイの顔。
「オコッテナイ。」
「ありがとな。・・助けてくれて」
「アレなら、アンタでも勝てた」
うん。と頷くセンパイ。
「でも、弟、殴れないし」
アイツは兄貴殴れるらしいけどな。

フビンなキョーダイ。



「アキタ、大好き」

その一言で、全部どうでも良くなった。しあわせなオレ。


ただ、これで、もう二度とコウキがセンパイの前に来ないかって
言ったら、来るだろう。
それだけが、気がかりだった。


暴力も手応えが無い。
ジョーカーは切っちまった。

そしたら、今度オレはいったい何を”武器”にアイツを倒せば
いいもんか?

一応、センパイの弟なんだよな。
そんな事を考えながら、オレはセンパイを抱き寄せた。
路地の向こう。駅前に出たら、手も繋げないオレ達。
べったり、抱き合ったまま、動きたくなくなる。
「アキタ。嬉しいんだけど・・・勃起してきちゃった」
「オレも、電車ン中でシようか」
「いいよ」
言って、センパイが笑う。



そんなバカなオレ達。
どうか、誰も、センパイを苦しめないでくれ。









それだけがオレのネガイ。





















































余談(オマケ)。



あの後、コウキはどうなったのか?





ギラギラに沸騰した目。
路上に座り込んだまま、通り過ぎる上稜高校の生徒にその憎しみ
をぶつける。
ジロジロと向けられる視線。
目が合ったその中の一人が話しかけてくる。

「ん?大丈夫か?オマエ、どうしたんだ、ケンカか?」

ソイツは長身で、細身、優男な風貌だった。
「うるせぇ!触るな!」
オレは傷ついたケモノよろしく、触れてくるモノ全てに噛み付いた。
声を掛けられたのはこれが3度目。
「運動しか取り得ねぇーくせにっ」
噛み殺すように言うと、ソイツは、無理矢理オレの腕を掴んで立ち
あがらせる。
「放せよ!!」
怒鳴り声だけが強がる。掴まれた腕を振り払う事は不可能だった。
「あるよ。運動以外にも取り得」
ソイツは優しそうな笑みでオレを引っ張ってく。
「何処行くんだよっ」
ズルズル、引き摺られるオレ。
ソイツは舌打ちして、歩道を上がり、オレを校舎を囲む雑木林の中
へ引き込んだ。

「や・・・!」

絶対ヤバイ、コイツ!

どんなに腕を引き剥がそうとしてもすごい力で、隙間も開かない。
ついに、腕に噛み付いてやる!と思った時。
その、オレを掴んだままの腕が振り子のように振られた。
直後、手は放され、オレは草の中へ放り投げられた。
シダ科の気持ち悪い葉が目の前にある。
オレは飛び上がって、尻を着いて手をハタイタ。
「何、やってんだ?」
「やだ、オレ、こういうトコキライなんだっ土とか、虫とかっ」
必死に訴えてるのに、ソイツはニヤニヤ笑うだけだ。
「どっかで見た顔なんだよな・・・」
そのセリフにビクつく。
もしかすると、ケイを知ってるヤツなのかも知れない。
冗談じゃない。
もう、ウンザリなんだ。
何もかも思い通りにならない。
あの、ケイですら、オレの思い通りにならないんだ。
ずっと、オレを可哀想な目で見てたケイ。
それが、今やっと逆転したっていうのに、オレには、何にもいい事
がなかった。
ケイがいなければ、母親からの一心に注がれる愛情も意味が無い。
あんな女、クソだ。
何が、コウちゃんは天才だっ
ガキの頃はサッカーが出来ないオレを蔑んだ目で見てたクセに!
オレが何もしないで、有名私立に入れるとでも本気で思ってるのが
恐ろしい。
オレだって勉強して勉強して、アンタ達を見返してやろうって頑張
ったんだ。
それを・・・。
オレが欲しかったのは、あんなネチッコイ愛なんかじゃねえ!
オレを見直した時の謝罪の言葉だ。

だが、そんなもの、聞けるわけがなかったんだ。
あの親じゃ。

「泣いてんの?怖い?」
「え?」
気づくと、ソイツがオレの上半身を裸に剥いている。
「わーーー!オレに何する気だっ」
「シーーー」
そのまま、押し倒される。
「ここ、さっきの道からそんな離れてねーから、大声出すと見つかる」
なら、大声出してやる!
と、思った時、悪魔の囁きが届く。
「ちなみに、オレは空手部」
ソイツは筋張った拳を自慢げに見せた。
さっき、アキタセイジに殴られた顔が痛んだ。
痛みが蘇る。
それに抗う術は無い。
抵抗するだけ空しいのは、子供の頃に学んだ。
だが、ただ殴られる意味がわからなかった。
それだけでも、聞いておきたい
「なんで、・・・オレを殴りたいんだ?」
「殴りたい?いや、殴らねーよ?ジっとしててくれれば。ただオレは
得意なモノをアンタに見せてやろうと思ってココへ連れて来ただけだ
し」
言って、ソイツはオレの腰を掴んだ。
「な、何?」
いつの間にかはずされていたベルト。
一気にズリ下げられた制服のズボンは下着も巻き込んで、オレの生身
に、冷たい土やら枯葉の感触が伝わる。
「ギャーーーッ」
思わず、くの字になって股間を隠した。
「だから、声出すなって」
何かを掌で捏ねるように動かして、その指を、ソイツは信じられない
場所へ差し込んだ。
「ヒッーーーー!!」
さっきまでキモチの悪かった草や泥や、木の葉や、虫に気が回らなく
なってくる。
夢中でそれらを掴んで、投げつけた。
もう一回!と掴んだ土。
そのままで両手を挙げた体勢で押さえつけられた。
「おイタが過ぎるぜ?一発、イれた方がいいか?」
もう殴られるなんて冗談じゃなかった。
頭をブンブン振って土も放す。
掌から砂が零れ落ちていく。
「な、殴んないで・・クダサイっオレ、オレ、言う事聞くから」
「・・へー、意外だな。絶対暴力に屈しないってタイプだと思ったけ
どな」
油断させる気か?ソイツは笑って、オレのソコを撫でた。
「ヤッ、ヤメロ!!」
ガチガチに膨れ上がった、チンポ。それを緩く絞り、上下に動かされ
る。
「あ、あ、アーーーー!」
「なんて、声出すんだよ・・・。なんだ、オマエ、もう、イったのか」
顔が真っ赤に燃える。
他人にそんな事をされたのは初めての経験だった。

ま、まさか。
これ?これが、コイツの得意な事?

どんどん霞んでいく頭で考えた。

なぜ、コイツはオレを?
さっき、ケツの中に突っ込まれた指に塗られてたのは何だ?
なんで、ケツの中になんか指を?
いや、なんでコイツはオレのチンポに触るんだ?

ガチャッと音がした。
見ると、ソイツが自分の勃起したチンポを撫でながら、ゴムをつけて
いるところだった。
コンドームつけてる・・・!!
見た事はある。
でも、つけた事は無い。
なぜなら、そんな必要にかられた事が無いからだ。

そして、ソイツはオレの膝を開いて・・・そして・・・。
「ギャーーーッッ」
「だから、なんつー声出すんだよ。あースゲー締まりいいな」
火がついたようだった。
焼印でも押されたような熱さ。
腰だけがこの男とくっ付いて引き摺られる。
体を持っていかれそうな気がして、慌てて、側の草やら土やらに手
を伸ばして掴んだ。
「怖い!コワイッヤメテッ怖いっ」
「なんか、面白れえ反応だな。童貞だろ?」
「やめて、ヤメテっやだっヤメテ!ああ!」
イヤだった。
嫌で嫌で、痛くて、引き裂かれそうで、体に力が入らない。
なのに、チンポが弾ける。
その度に笑い声が聞こえる。
「何、オマエ、オモシレー!突く度に、噴出してる」
これは、何?
何してるんだ?
コイツ、オレになんて事を・・。
なんて、イヤラシイ事を・・。
そうだ、これは、・・・レイプだ!
セックスの無理な強要だ!

涙が止まらなかった。
男のクセに男にレイプされている。
揺さぶられ、体に触れる植物も一緒にガサガサと音を出した。

無理矢理なのに、オレ、射精してる・・!!

恥ずかしい。
ハズカシイ。
ハズカシイ。
死んでしまいたい。
それでも、オレのチンポは精液を噴き上げ、ソイツを笑わせる。
強く、強く、腰を打ち付けてくる。
中がグチャグチャになって、押しつぶされていく。
何処まで、這入って来るんだ・・・!?
「もう、ヤメ・・!」
オレはイキっぱなしのチンポを感じながら、瞼を閉じた。






すっかり、意識の失った体から、カネダはチンポを引き抜く。
「ご馳走様」
有名私立の指定ワイシャツでカネダはチンポを拭った。
そのシャツを、横たわったままの、グニャと曲がった膝を開い
た体の上へ放り投げる。
自分の身繕いを完全に済ませてから、カネダは、たった今まで
自分と体のカンケーを築いた相手を起こそうとした。
と、制服のポケットに入っていたのか、生徒手帳が側に落ちて
いるのを見つけた。
「名前も聞いてなかったな、そういや」
捲るページ。
その名前に、カネダはこの人物が誰かを知る。
途端。
噴出さずにはいられない。
「ヤッベ・・!オレ、キョウダイ纏めて面倒みちまったって事か?」

こんな偶然てアリ?

おかしすぎて、カネダは体を屈めて笑う。
それから、カネダはコウキの携帯を探す。
ナンバーを自分の携帯へ送信し、今度はイキまくって脱力している
体を写メに取って送る。
笑いを堪えながら、アキタに言ったらどんな顔をするかと、想像が
尽きない。
「ヒロイものだ。どうりで、誰かに似てると思ったぜ・・」
カネダは勿論。
コウキを捨てたまま、そこから離れた。
コウキの携帯に送りつけた写真。
それを見たらコウキはどうなるか。
それを思うと、顔がニヤケル。
「あ〜、残念だぜ、イズミサワ先輩にアキタがくっついてなきゃ、
キョウダイ競演出来たとこだぜ」

あー、もったいねー。
二人並べて、交互に突き入れてえ。
想像は止まらない。


「試しに、交渉してみっか」






カネダが掛けた電話。
ソレに思いがけない程のアキタのリアクションが返ってくる。



「デカシタ!!カネダ!オマエってマジオットコマエだぜ!」(笑)



携帯から聞こえてくる歓喜に、首を傾げるカネダだった。








back
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送