また雨だ。



もうすぐ梅雨。
窓に打ち付ける雨粒が、空を覆う雨雲が、校舎の
中、オレの気分をも、暗くする。


ゴンゾーさん(監督)抜きの室内練習。
気合が入るワケが無い。
何が楽しくて、校内の階段行ったり来たり、廊下で
腹筋、腕立てしなきゃなんないのか。

「モリヤ」
4階まで走り上がった時、小さな声で名前を呼ばれた。
声がする方を見ると、一年の教室の戸を細く開けて、
オレを手招きする影。
Uターンしていく周りを、チラと見て、オレは素早く、
手招きする戸の中へ入った。
電気もつけていない薄暗い教室。
締めた戸の横に、アキタさんがいた。
「ナイス滑り込み」
「何やってんスか?」
「ん?イメ(−ジ)トレ(ニング)」
「は?」

イメトレって・・、サボってるだけじゃ・・。

アキタさんは窓際へ歩き出す。
そっち。
「センパ!!」
イッ、と出た大声に慌てて口を塞ぐ。
軽く手を上げるワタヌキ。

何やってんだよ・・このヒト達は・・!

でも、顔がニヤける。
その顔を手で隠しながらオレもワタヌキに近づく。

床に座るワタヌキの横。
机で見えなかっただけに、人影にギクっとした。
「あ、・・チハッス」
驚きで喉が引っかかった。


おもっきし、ビビッた・・!


オレはとりあえずワタヌキから距離離して座る。
教室の後ろ側の壁に背中つけて。
ワタヌキの斜め横。
そんなオレを咎めるような目でワタヌキが見る。

んな顔されたって・・・。
隣になんか座れねーよ。

ワタヌキの隣には知らない2年(たぶん)が居た。
茶髪にクリッてパーマ。こんなカッコだけどサッカ
ー上手いよって雰囲気。ちょっと小さい感じするけど。

その後、オレの隣にアキタさんがしゃがんだ。
「アレ、誰かコケるまで続ける気だろ」
「あー、なら、もう誰かコケてましたよ。下の方だ
ったけど」
「んだよ。派手にヤレっつーの。骨折るくらいに」
アキタさんが笑う。
「シャレんなんないデス」
ワラエマセン。

と、急に静かになる空気。


ヤな空気だな・・・。
オレ、こういうの苦手。


思わず、アキタさんの顔見ると、アキタさんは、目
だけオレに向けて、すぐワタヌキの方へ目配せした。
「で、行かねー?マジ」
ワタヌキの隣の人物がワタヌキに話しかける。
それも、かなり露骨に。
ワタヌキの耳に顔近づけて。

・・・・。
オレ、なんか今変な感じ。
ムカついた。
なんかわかんない。ムカついた。

それで、こんなとこ居たくないって立ち上がろうか
と思った時、アキタさんが動いた。
「んだよ、オレの分ねえの?」
立ち上がると今度はワタヌキの前へ座る。
「ない。つーか、オレはワタヌキタツトとサッカー
語るためにこのチケットを有意義にだな・・って、
オマエ、何してんの?」
アキタさんは、ワタヌキの膝を伸ばさせると、その
足をワヤワヤと揉み出した。
「サジマ」
ワタヌキは微動だにせず好きにさせてた。

いくらなんでも、・・引いたぞ・・・なんか。
それはワタヌキの隣の方(かた)も同じ様で、呆気に
取られた顔。

もしかして、オレも同じ様な顔してた・・!?
思わず、唇を舌で舐める。
ヤバイヤバイ、マジで少し、口開いてたって!

「オマエ、下手なんだよ。・・ナギ」
「そりゃ、いつもヤラしてるヤツには敵イマセン」
って、アキタさんがワタヌキの足を離す。
それから、アキタさんがコッチ見て笑う。


イヤ。
ちょっと待て。
オレが?
オレにヤレってコト?
って、いうか・・・いつもって・・・一回もそんな事
したことねーぞ。


「ナギ」
呼ばれて、仕方無く膝立ちで近づくと、ワタヌキが笑顔で
迎える。
「ア!オマエ・・・ワタヌキタツトの親戚ってヤツだ?」
(それは過去にアキタさんが流したガセネタだ)
何というか、初めてオレに気づいたみたいな言い方だった。
「・・はい」
「なるほどネ」
と、一人頷きながら納得してる。
オレは渋々ワタヌキの足をマッサージしてやろうと手を
伸ばした、その手。
ワタヌキが握り締めてくる。
「センパイ・・?」
「座れ」
ワタヌキはオレを自分の横に座らせると顔を近づけて来た。

な、な、ナニスルキデスカ!?

「寝る」

は?

「オマエ、もっとアッチ行けよ。オレ、ちょっと寝る」
と、ワタヌキは隣の彼に言って足を向けた。
で、顔は、というと。
オレの腿の上。

えー・・・・。
こういうのって、フツウか?

オレはかなり緊張してた。
だって、スゴイ目であの人コッチ見てるし・・!
しかし、彼は食い下がってきた。
「なぁ、行こうぜ?めったに来ないぜ、バルサだぜ?」
「バルサ!?」

シマッタ。
思わず反応しちまった。
「いいだろー?上の人に招待で貰ったのがあんだよ。ナマで
見れるチャンスなんて、めった、ねえからな」

貰っただと!?

オレは一瞬殺意を抱く。
金があったって取れねえチケットを、貰っただと!?
しかも、何だよ上の人って!テメー、ヤクザか会社員か?

そんなムカつきが、ワタヌキに伝わったのか、ワタヌキが
笑い出した。
「ナギ、行きてえの?バルサだぞ?レアルじゃねーぞ。オ
マエ、レアルのが見てーんじゃねーの?」

うっ。
そりゃ、ロナウジーニョよりジダンの方が見たい。
サムエルもロナウドも見たい。
ついでにカシージャスも。

黙ってると、ワタヌキが手を伸ばしてくる。
前髪掻き上げられて、額に手の平が触れる。
見ると、ワタヌキが真っ直ぐ見つめてくる。

顔、近いっつーの!

「ま、レアルもその内来るんじゃねーの」
チケットをチラつかせながらソイツは飄々と言う。
「じゃ、ナギ、チェックしとけよ。一緒行こうぜレアル
来たら」
「え!?」


だって、アンタいつも興味なさそうなクセに・・?
アレ、結構高いんだぜ?好きでもないチーム見に、高い金
払うっての?
イヤ、実際チケット取れるかもわかんないんだけど・・。


「何だよ・・行かねーのかよ」
「行く!絶対行く!!」
ワタヌキは満足したのかまた少し口の端上げて、目を閉じた。
それで、目を閉じたままアイツに言った。
「オレ、ナギと行くから」

なんか、スゲー断り方じゃねえ?
その一言で再び、重苦しいあの空気が蘇る。


いや、アイツの視線がオレを刺してくるんだよ。


めちゃくちゃ、シラけた目。
オレはソッチ向かないように微妙に顔の向き変えた。
「んだよっ」
ソイツは立ち上がるとカラダ、机にぶつけながら、教室を出て
行った。


怒ってラッシャイマス。カナリ。
ナンナノ?
なんだったんだ?


「キッツイな〜」
アキタさんが笑い出す。
「しつけーんだよ、あのアホ」
ワタヌキもパチっと目を開けるとまた座り直す。
「気づいたか?」
ワタヌキがアキタさんに言う。
「前、お前に会うためにココ(上稜高校)入ったって言ってた
事あったな」
聞いて、ワタヌキの眉間が寄った。
「ウゼーな。山に捨てて来てくれ」
「樹海でいーか?」
「いい、いい。マジで」

すげえ楽しそうな二人。
フイに向けられる視線。
「ナギ。アイツに声掛けられても付いてくなよ」
「そうそう。飴玉貰ってもナ。母ちゃん病気って言われてもナ」
「ナンデスカ、ソレ。っていうかアレ誰?」
途端に二人の顔が驚く。
アキタさんが噴出してオレの背中を叩いてくる。
「オマエは最高だ!!良かったなワタヌキ、コイツお前しか知ら
ねーんだぞ!!最高、サイコー、あー、ウケた。教えてやるよ。
モリヤ。アレが誰だか」
「イッ痛いッス、アキタさん」

そんな有名人がウチにいたんだろうか。
気にした事なかったな。
キタムラはワタヌキ信者派だし・・。

「フジイタツト。2−E。ジュニアからクラブチーム所属。それ
が、オレらと一緒にここへ入学して、そのまま部活に入っちまっ
たってヤツ」
「へー」

フジイタツト・・。タツト・・。
ジュニア・・クラブチーム・・。
じゃ、すごいんだ。
でも、オレそんなウマイ人が居たら気づくと思うんだけどな・・。
それとも、オレ、ワタヌキのプレーばっか見てるから、他がゼンゼ
ン上手く見えなくなっちまったのかな・・?

そんなオレの耳元へアキタさんが囁いた。
「ワタヌキ狙いだ、気つけろヨ」

え・・・!?
ワタヌキ狙い・・?
どう・・・狙ってるって意味?

見返すと、アキタさんはマジメな顔でオレを見てた。
少し憂いの表情?


・・・ネラッテル。
・・・・。
まさか。
まさかだよ。
そんなハナシ。

ワタヌキの顔を覗く。
何も変わってない。

アンタはわかってるって事だよナ・・?
その顔は、なんも心配ないって事だよナ・・?

オレの視線に、ワタヌキが気づいて、少し抱き寄せられた。
シャツ越しの体温。
「行くか、そろそろ」
ワタヌキが立ち上がって、オレもアキタさんも立ち上がった。
階段はもう静かで、オレ達が一階へ降りてくと廊下を使って皆、
腹筋始めてた。
その中に、フジイタツトの姿を見つける。
今まで故意に見ようとも思わなかったのに。



フジイタツト。
ワタヌキと同じ名前。
それだけの感想しか言いたくない。
考えたくなかった。
それでも、あの教室での光景を思い出してしまう。
馴れ馴れしくワタヌキを呼ぶあの態度を。








あの一件以来。
そんな事考えてたら、オレ、部活に行くのがイヤになってた。
オレは何度と無く、ワタヌキに絡むフジイタツトの姿を見
つけて胃がキリキリした。
仲がいい友達同士ならよくあるコーケーみたいな、じゃれ
合うような姿。
んなの、フツウだ。って自分に言い聞かせる。
言い聞かせるけど、目の端にでも入ると、ムカつく。
しかも、ワザとオレの前でヤルようにしてる気がするから、
また腹が立つ。
頼むから、見えねーとこでヤレよ!
ムカつくなぁ・・・。
今まで気づかなかったのが嘘みたいに露骨だ。
それとも、あの日、ワタヌキがオレと行くって言ったせいで、
やってるんだろうか?
だとしたら、それこそ、怒れない。
知らんフリするしかない。
下手な嫉妬なんかで、オレとワタヌキのカンケーをバラした
くなんか無い。
ああ、胃がオモイ。

「何だよ、部活行かねえのか?」
6限の終わりの鐘。
いつまでも席を立たないオレに、キタムラがオレを振り返る。
「アー・・・。ちょっと、腹イテェかも」
胃の辺りを思わず摩ってしまった。
「なら、言っといてやるよ。それで、何か元気なかったの
かオマエ。ムリすんなよ」
「ワリッサンキューな」
キタムラと昇降口で別れた。校門までの距離200。
その途中。
なんでオレが部活休んだと思ってんだよってツッコミた
くなる。
フジイタツトがコッチに歩いてくる。カッカッカッって
スパイクの音させて。
「何、お前、サボリか?」
「ちょっと、具合悪いんで」
オレはそれだけで済まして頭下げて通り過ぎようとした。
「待てよ」
肘の内側掴まれる。
舌打ちしそうだった。
「なぁ売ってやろうか?バルサのチケット」

何・・・言ってんだ、コイツ・・。

「ワタヌキタツトが一緒行ってくれねーんじゃ意味ねーし。
お前行きたかったら、3万で売ってやるよ」

・・・・。
コイツ、コロシテイイカ?

フジイタツトはイケシャアシャアと貰ったというチケット
をオレに三万円で売りつけようとシマシタ。
ムカシこういう軽犯罪あったよな。有りもしないパーティ
券売るとか。
コイツの持ってるこのフィーファのスカシがモノホンかど
うか知らねーけど・・・・。


誰が買うか!!


「ハナシテクダサイヨ」
オレは睨みつけて腕振り解こうとした。
その腕を、離すかよっって感じで力を入れられる。
「なぁ、なんでワタヌキタツトはお前にばっかアドバイスすん
の?なんかっつーと、声掛けてるよなアイツ。別にお前ズバ抜
けて上手いわけじゃねーのに。オレなんかジュニア居たんだぜ?
もっとオレとなら見えてる世界分かり合えるって気すんのに。
お前ってアイツの何?」

「う」るせーんだよ!!って叫びそうになったトコロだった。
「ウマイよ。モリヤ」
被った「う」の音。
その声へ顔を向けると、イズミサワ先輩が黒いビブス着て立っ
てた。
そのまま少し歩いてって、行っちゃうのかと思ったら球を拾っ
て帰ってくる。
「モリヤは上手いよ。お前よりな。ジュニアに入ってたって?
オレも入ってた。親がそれ以上望まなかったからヤメたけどな。
お前も、そんな理由でヤメた訳?・・・・でなきゃ、ヤメたな
んて言わねーよな。フツウ。クビだよな。自分でヤメたんじゃ
なきゃ」
表情の無い顔で話すイズミサワ先輩。

すげーマイナスのオーラ放ってる・・!

「いや、オレは、ヤメ、ヤメた・・っつーか・・」
歯切れの悪いシャベリ。
「モリヤ、具合悪そうじゃん。早く帰りナ。3年命令」
イズミサワ先輩が暗い顔少し緩めて、イケイケと手を振る。
「ハイ・・!スミマセンシタっ」
オレが歩き出すと、イズミサワ先輩はまだ言いたい事があっ
たみたいでフジイタツトに話しかけてた。
それは、オレには遠く聞こえてただけだったけど。
すげえ嬉しかった。

しかし、いいタイミングに球取りに来たなぁ・・。
って三年が球拾いなんて・・・するか?
・・・ワザと?
もしか、・・・助けに来てくれた・・?あの人・・。








「なんで、お前、ワタヌキの事わざわざフルネーム呼びな
ワケ?同じ名前ならなおさら苗字で呼べばいいんじゃねえの?
お前、ワタヌキになんで、そんなに絡むワケ?なんか、お前
見てるとイライラしてくんだよネ。オレが怖い先輩だって知
らないワケじゃねえよな?」
完全に頭を押さえ込まれたフジイタツト。
バツの悪い顔。後ろ手に組んで直立不動。
その手に持っていたチケットがスッと抜かれる。
ハッと驚いて見上げた先に、アキタが立っている。
「身長も才能の内ってな。ジュニアの時は良かったんだろう
けど」
フジイタツトの顔が蒼冷める。
「コレ、いらねーんだって?なら、オレ貰ってもいい?お前
も、確か、貰ったっつってたもんナ?ねー、センパイ、オレ
と行かない?」
話を振られたイズミサワは体育館脇の花壇の淵に足を掛けて、
靴紐を縛り直す。
「行かない。オレはマンチェのファンだから。レッドデビル
だから」
「嘘吐け。誰居るかも知らねーだろ。・・そういや、センパ
イ何処のファン?」
「オレはオノのファン」
「オノ?・・・オノシンジか!、あ」
緩んだ間。
フジイタツトが走って行く。
「あ〜あ、行っちまった。・・・コッエーセンパイ」
アキタがチケットを見ながらイズミサワに近づく。
「だってマジ、ムカついたから。あの自分は特別だって態度。
なんでも許されるって信じて疑わない態度。あの自信て何?
どっからくんの?」
「さぁ〜てネ。で、コレ行く?行かない?」
「オレも・・・(前居たクラブチームの人に)言えば、貰え
るもん、んなの・・」
アキタが目を見開く。
「カッキー・・・。センパイ、すげーカッキーじゃん。さすが、
ジュニアで鳴らしてただけあるな。じゃ、コレいらねえや」
アキタはそれを無造作にポケットへ仕舞う。
それから、イズミサワがリフティングしながら歩くその後ろを
アキタは付いて行った。
「アンタはホンモンだよ」









家に着く頃。

オレ(モリヤ ナギ)の携帯が鳴った。
表示は勿論ジダン(ワタヌキの事)。
いつもの通り、アイサツ無しで会話は始まる。

『大丈夫か?』
「んー、ヘイキ。それより、すげーんだぜ?今日イズミサワ先
輩がサ」
『アキタに聞いた。あの後もかなりあの人荒れてたからナ。フ
ジイもビビッてたぜ』
ワタヌキが笑いを堪えてる。
「オレ、なんかヤだったよ。・・・アイツがアンタの名前呼ん
だりとかサ・・」
『へー・・・嫉妬?』
「違う!違うっつーの!!アンタはキングらしくキングの威厳
保てよ!・・・そんだけ!」
『・・・ナルホド。でも、もし嫉妬してムカついたなら、言え
よ?いくらでも、シメてやるから。オレはいつだってオマエ守
りてーんだから』
「センパイ・・」
『ただ、オマエがこんな内に秘めるタイプと思わなかったから、
平気なのかとカンチガイした。悪かったな、胃痛くなるまで、
アイツ放っといて』

誰が胃が痛いって言って・・・キタムラか!!

アイツの前で胃を摩ったのを思い出す。
「いや、チガウって別にそのせいじゃっ」
『オレはもっとハッキリオマエに声に出して欲しかった』
「センパイ」
『オレのワガママで・・・アイツの事放っといた。悪かった。
ちゃんと、クスリ飲めよ。じゃな』



一方的に切るな。
マジ、ワガママだよな。
オレに、「オレのセンパイに触るな!」とでも言って欲しかった
ってのかよ?

オレはもう一度携帯開いて、字打った。

”セックスシタイ”

送信。


どんな顔するかな?
まだ、練習中のハズだから、抜けられない。
アンタ、きっとイライラするんだろうな。
いい気味だ。
オレを試そうとした罰だ。


込み上げる笑い。


この時のオレは、このすぐ30分後に、キングがウチに現れるとは
思いもしなかった。
もちろん、ヤツはオレがイヤがるのも聞かないで、オレを押し倒した。
妹が帰って来る時間だから、ヤメテクレって頼んでも、アイツは止
まんなくて、結局、声殺して、服着たままヤラれた。
それでも、荒い息遣いが隣の部屋に聞こえてなかったかどうかは、わ
からない。
「もしバレたら、妹に謝ってやるよ。オレが全部悪いって。だから、
ヤラセロ。つーか、オマエがあんなメール打つのがワリィ。とにかく
挿れなきゃオサマらねえんだよ」

妹に謝ってもらっても・・・!!
つーか、謝ってもしょうがねえだろ・・っ
バレたら、オレ、死にたくなるっ
いくらなんでも、家族になんてバレたくねえ!!





オレは必死で声を抑えた。

烈しく揺さぶられて、蕩けそうな意識の中で・・。























果たして、アキタのポケットに入ったチケットは?






数日後、それが再びナギの前へ差し出される事になる。
三日続いたグズついた天気の後の晴れた朝。

「モリヤ!見ろよ、コレ!」

ギョっとした。
間違いなく、あのチケットだ!
「スゲーだろ?バルセロナが日本に来るんだぜ?ロナルドジー
ニョが来るんだぜ?」
見たいだろ?ってチケット片手に、オレに迫る。

ツヅキ・・!!

つーかな、間違ってるから。
ロナウジーニョだから。

「オマエ・・・それ、どっから?」
「部活の先輩から。4万でいいっていうから。本当は6万くらい
するみたいだけどな」

値上がってる・・!!

でも、たぶん何も知らんで買ったツヅキには安く思えたんだろう。

それ・・。
オレのためとか、言うなよな?オレは知らねえからなっ

「悪いけど、・・オレ・・レアルのが好きだから・・」
「・・・れある?・・・れある・・」
ツヅキがチケットを見つめる。

いや、それは、バルサだから。

「そっか・・・。れあるが見たかったのか・・・。バルセロナじゃ
なくて・・」
がっかりって怖いくらいハッキリ、頭の上に書いてある。
つーかな、オマエとは行かねーぞ、オレは・・。
物で釣ろうとしやがって・・コイツ。
「いや、いいんだ。わかったから」
ツヅキは闘志に燃えた目で去って行った。
たぶん、転売する気だナ。
値を吊り上げて。







ガンバレヨ、ツヅキ・・・!





元値がゼロって知ったらアイツ怒るだろうなぁ・・。


それにしても、サッカー知らないクセに、チケット買うなよナ。
バカめ。







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