「なあ、お前、イク時どんくらい出る?」

朝の10分の休み時間。
オレの前でジャンプを読む横顔が固まる。
で、ゆっくりオレを見て、考えてから答える。
「こんくらい?」
掌に溜まる程度に手の中心をへこませた。
「・・・・・」
「・・・・・」
で、二人で噴出す。
何、マジな顔で聞くんデスカって。
ひとしきり笑ってから、タケが素で聞いてくる。
「何の相談だよ?シガ」
「いや、ちょっと、AVで気になったから」
「バカじゃねーの。あんなん信じんなよ。顔シャ
とかゼッテェー嘘。怒られるっつーの。てか、アレ
精子じゃねーよな」
「お、裏トリビア?」
笑うオレ。
でも、笑ってる場合じゃねーんだヨ。マジでオレ。









シガ ラン。本気の恋で悪戦苦闘中、17歳。
いや、本気の恋っていうか本気のナマエッチで、だけど。



いいの?
いいのか?あれ。

アレ。
あれってのはサ。
その、アレだよ。
・・・・ゲンの・・・。
えーと・・・。
ゲンがだネ。その、オレの、オレの中でサ、・・・出す
んだよ・・・。
・・・・精子。
・・・・・・。
だからサ、その・・・・精子が、ゲンのヤツって・・・
ティッシュ2、3枚くらいじゃ足んないくらい出んだよ
・・・。
・・それをサ、・・・・オレの・・・中で・・・。

あーーーーーー!!もう考えたくねえ!!
やめたっやめたっっ
バカみてー、オレ、生理こなくて悩んでるオンナかっ
つーの!!


アタマ振って、切り替える。
タケの置いてったジャンプ読んで気分転換!
って、オレの口からハァーって溜息が出てビックリ。


オレ、溜息ついてる・・・。


こんなに。
何かで悩んだ事あったっけ?
毎日、気楽で。
ゲンとつるんでればそれで良くって。
クラブ行って、はしゃいで、飲んで、ガッコも適当で。

・・・・スゲー・・・どうでもいい毎日なんだけど、そ
の繰り返しも結構気に入ってた。

それが、ここんとこ一日置きに、ゲンとヤってる。

ゲンって、ゲンの精子ってハンパないくらい出んだよ。
中が溶かされるくらい熱く感じて、身悶えて。
セックスで、あんなに興奮する瞬間他に無い。
ゲンは、体重乗せて押し込んで、イク。
だいたいその時はオレのが先に出ちゃってる。
でも、カラダの中で出されたソレが、これ以上這入らない
ってくらいにゲンでイッパイの中、無理矢理膨らます。
ソレがスゴイ。
他人の体温ってすげー熱く感じるから、余計。
中がイッパイイッパイでちょっと苦しくて、逃げたくなる
腰、ゲンが掴んで言うんだ。
「動くなよ。一番奥で出さねーと、すぐ溢れる」
って、ビクッビクッって腰動かす。
「ぅン!」

動くなって!?そりゃ、コッチのセリフ!

「ラン」
ハァハァしながら、ゲンが呼ぶこの声が好きだ。
もっと聞きたくて、目閉じたままシカトする。
「ラン」
掠れた声が近づいて来る。
唇より先、ゲンの髪がオレの顔に触る。
その感触に一瞬竦んで、目開けると、目の前にゲンの目。
「ラン」
「ゲ・・ん」
ん、で噛み付かれた。アマガミ。
「噛むなよ」
「ヤダ、噛む」
「歯、立てんな」
「柔らかくて、キモチいんだよ」
で、また唇に歯立てられる。
「いてぇって」
「キモチい」
「聞けよ」
「もっかいシよ、ラン。オレまだ出そう」
これでオレはコトバ失った。
また、深く抉られて、ガクガク、ヤられて、また出される
んだ。
ソレがスゴイ量。
たぶんコップに半分くらい。
たぶんある。
だから、ゲンは自分で知ってて、チンポ抜き出す時いつも
自分のシャツ、オレのケツの下に入れたり、その辺にあるオ
レのティーシャツで拭いたりする。

おい、ソレ・・・オレもう着る気になれねーぞ・・!!
っていうか、オレが洗わなきゃ・・?


で、結局、廃棄。

これじゃ、オチオチ脱ぎ捨てられねーよ。
自分の部屋なのに。

「ゲン・・・頼む、ヤる気で来るなら、・・タオル用意して」
クッタクタで目も開かないけど、無残なオレのディーゼルの
ティーシャツを思う。
「ハイハイ。服くらい買ってやるから、シャワー浴び行って
から寝てクダサイ?ランくーん?ラン君、起きてクダサーイ」

ナニが、ランくーんだ・・!
眠みぃーんだよ!オレはっテメーに、好き勝手に突っ込まれ
て、疲れてんだよ!

ってシカトしてたら、ゲンがオレにキスしながらボソって
言った。
「ビョーキんなっても知らねーからな」

で。
覚醒。


びようき?
ビヨウキ?
びようき?

なんで・・もしかして・・・ナマでシテるから?
精子って体に・・ワルイ?
精子って・・・おたまじゃくし、ウヨウヨのヤツで・・・。
イワユル・・・イキモノ・・・?
もしかして。
それ、オレ吸収してるって・・・カラダにワルイんじゃ・・?
腸って・・・ダイレクトで吸い取ってる・・よな・・?
それも・・ゲンってすげー常識無しの量を、ヒトんナカに・・。

・・・・・・。

急に血の気が引いた。
英語のあの文字が浮かぶ。
一度掛かったら治らないって有名な病気。

アタマが真っ白。
で、とにかくシャワー浴びたけど、ゲンがいつ帰ったのかとかも、
全然覚えてなかった。







それが二日前。

昨日、オレはゲンを初めて拒否した。
拒否っつっても、窓に鍵して、部屋の電気も消して、居留守してた
だけだけど。
自分で考えても、なんつー情けない、拒否方法か。
ナマですんのやめてくれって言や、いいんだ。
だけど。
だけどさ。

・・・・オレ達って、別に、付き合ってるワケじゃねえんだよな・・。

ゲンは。
ナマで出来るから、オレとシてるだけで・・・ナナとも別れてない。

ただのセフレ・・・なんだよな、オレって。
でなきゃ、ただの幼馴染。
ナマでヤらせねーって言ったら・・・アイツもう来なくなったりして・・。

苦笑。

有り得る。


さぁ、どうするオレ?
病気もコエーけど、ゲンとセックス出来なくなるのはもっとコエーし。
・・・・やっぱ病気のがコエーよ!!
病気んなっちゃったら、セックスセックス言ってらんねーっつーの!
じゃ、言うか?
ゴムしてくれって。
・・・・・。
・・・・・。

ゲンのセリフがコダマする。
「ナマでヤらせて」って。

たぶん、今夜もアイツ来る。
昨日の夜、しつこく携帯鳴らしてたし。

さぁ、どうするオレ?







携帯が真っ暗な部屋の中で鳴る。


結局。

オレはカーテン閉めてベッドの中で寝たフリ。

ああ、どうせオレはヘタレだよ。
キッパリ言えねえ性格ですよ。
ゴメンな・・・ゲン。
怒ってるよな・・?
感じ悪りぃ事して、ゴメンな?
大好きなのに、セックスさせてやれなくてごめん。
ごめん。
ゴメン。
だから。
謝るから、他のヤツとヤんないで・・・・。

ベッドの中で鼻啜りながら、ゲンからの着信見つめてた。
着メロが3回リピートして切れる。
切なくて、ただ涙が零れた。













次の日。
オレの家の前に王子がいた。
いつもはベンツのくせに、わざわざ、広い庭囲んでる塀
ぐるっと回ってウチの前に。
「げ、げ、げん」

なんつー、ドモリ方!
でも、動悸がっ動悸のせいでっ

「こんな遅く出て、よく間に合うな」
ゲンが溜息一つ吐いて言う。
「何かシた?オレ」
「え!?」
「何か、オマエ怒らせるような事したのかよオレ」
笑ってない。
ゲンが素で聞いてくる。

ゲン・・・オレがなんか怒ってるって思って・・?

なんか涙出そうだった。
だって、こんな態度見たことねーもん。
いつだって、ちゃかしたり、ハグラカシタリ、スカシタリで。
マジな事なんて、ねーじゃん?
なかったじゃん?オレら。

「ゲン・・」
言うか?
言えば、ゲンはちゃんとシテくれると思う。
でも、もしも。
もしも。がコワイ。
もしも、「じゃ、もいい」だったら?
オレ、立ち直れんの?
あんなセックス覚えたカラダで、誰と付き合えるよ?
ゲン以外なんて考えらんないのに。

「ラン?」
ゲンがオレの腕掴んだ。
俯いてた顔上げたら、涙が落ちた。

ヤバッ

で、横向いたらゲンがオレの名前叫んだ。

あ・・れ?

世界が白く霞んでって。
ゲンが薄くなって。
耳がキーーンって。


でも、ゲンがオレを抱きしめる感じがした。
久しぶりに嗅いだ、ゲンの匂い。




ああ、オレ、倒れたのかも。






ビョウキで・・・?















目が覚めたのは、チクリとした腕の痛みで。
クスリ臭い白い部屋。
おっさんの声が話しかける。
「貧血ですから、30分程点滴落としときます。あと、薬
も出しますから、貰ってから帰って下さい」
「ハイ、ありがとうございました。どうもお世話になりま
した」
って、母親の声。
それが、おっさん(医者)の声と離れてく。
で、油断した。
「ラン?」
「ワッ」
すぐ側で、ゲンの声がして驚いた。
「なにビビってんだよっ超心配させやがって!」
ゲンがオレの手、握ってた。
その手、ベッドの上で、ぎゅっってされてる。
「ゲン・・・オレ・・・ビョウキんなっちゃったのか?」
言って、目の裏が痛くなる。
なんも余裕が無い。だから、口からどんどん不安が出ていく。
「は!?貧血だよっ貧血!!このアル中!!ちゃんと牛乳
飲め!!このバカ!」
「・・・貧血・・。って、ビョウキじゃない?」
「なんのビョウキだよ?」
「・・・え、・・いず・・とか・・・」
聞いたゲンの顔が、固まる。
握ってた手の力も抜けてる。
で、オレ、思わず泣き出しちまった。
「・・ば、バカじゃねーの・・?」
ゲンが真っ赤になってる。
「アレは完全な感染症で、そういうオンナに突っ込んだり、
そういう精液飲んだりしない限り、自然発症したりなんか
しねーんだよ!!」
で、ゲンは前髪掻き上げながら続ける。
「お、オレは、セックスはクリーンだ。オンナとする時は
絶対ナマで出来ねーし(量が多いから)、オトコなんか、
オマエしかいねーし・・!・・・それとも、なんだよ。オ
マエ、心当たりでもあんのかよ!?」
手また強く握られた。
それ、オレも握って、強く握り返して、泣きながら。
「ねえよ。ねえ!でも、オレ、すげえ、心配で、半端ねえ量
オレ、オマエの精子飲んじゃってて、したら、オマエ、病気
になっても知らねーぞって言うからっオレはっ・・!」
そこで、見開いたゲンの目が泳ぐ。
「そ、・・・そんな事・・・言った・・・気もするけど。あ
れは、腹壊したりしたら可哀想だと・・思ったからで・・・。
っていうかな?量は関係ねーだろ、量は。だったら風俗のね
ーちゃんとかどうなんだよ。ナマフェラとかアリなんだぜ金
さえありゃ」

フーゾク・・・・確かに、一日、何発も飲むのかも知んない。
したら、ゲンの量の、それ以上かも知んない。
そっか・・・。じゃ、別に・・・ダイジョウブ・・?ナマで
してても・・?いっぱい飲んじゃっても?病気になんないんだ?

「ゲ・・ン・・・!!オレ、こわくて、こわくてっ」
「早く言えよ!心配してたなら言えっつーの!んな心配する
なら、もうオンナなんか切るから。変な心配すんなよっ」
悔しそうな顔でゲンがオレの髪梳いた。

今、スゲーコトバ聞いた・・・。このセックス大好きオトコ、
オンナ・・・切るって・・・言った。
ナナを?
ナナと別れるって・・コト?

「オマエも、オレが好きだっつーんだから他になんていねえ
んだろうな?居たら許さねーからな。オレと付き合ってる間
は、オレ以外とセックスすんな。わけわかんねーのとヤルか
ら、病気になんだよ」
わかったのかよ?って聞かれて頷いた。



涙が止まんなかった。
オマエ以外と誰がヤるかよ!
誰がヤラせるか!!



オレ、シアワセすぎる。

貧血なんかどっかいっちゃって、飛びつくみたいに起きて、
ゲンに抱きついて大泣きした。
で、ゲンもギュッってオレの背中に腕廻して、息出来ないよ
うな苦しいキスしてくる。
「ゲンっ好き、超好き」
「超とか付けんな。重みがねえぞソレ」
「超好きなんだからしょうがねーだろ!」
って、思わず、ゲンの股間、手で撫でたら。


ガシャンッッ!!


驚いて二人で見ると、点滴のポール(?)が倒れてた。
床に点滴の袋の中の液体が出て広がってく。
「ラン!!」
慌てて、ゲンがオレの腕に刺さってる管を折って握った。
「早く、ナースコール!!血管に空気入ったら、オマエ、やべ
ーんだぞ!?早く!!」

ゾッ!!
冗談じゃない!!
未知の病気どころか、こんな管のせいで死ぬなんて!!

「ラン!!」

よく、やったとオレも思う。
オレはテープで止められてた針をムリヤリ引き抜いた。
(絶対してはイケマセン)
テープで止まってたせいで一点を通ってた針が皮膚を裂いて、
抜き出た。
「ラン!!このバカ!!」
ゲンが持ってた管放り投げて、掌でそこを握って、ナースコ
ールする。
「早く!誰か!!血が出てる!!ランの血止めてくれ!!」
オレはなんか呆然としながら、叫んでるゲンの胸に寄り掛か
って腕見てた。
オレの腕とゲンの手の間からポタポタと血が流れてってた。

あ、なんか失敗したかも・・。

そう思ったら笑えて、オレはゲンに抱きしめられながら笑い
堪えてた。
「なんなんだよ、テメーは!こっちが心配で胃やられるっつー
の!」

ハハッ
ゴメンナ?ゲン。
でも、オレしあわせだ。
オマエがオレ心配してくれてるなんてサ。
すげー嬉しいんだも。
ゲン。
大好き。
もう、いっぱい出してもいいよ?ナマでいっぱいしていいよ。







それで。
二針縫いました。
痛!!









一週間で抜糸も終え、傷口は包帯から絆創膏に変わった。

久しぶりに二人で飲みに行ったのは「ラスタ」。
「セージ」
いつものカウンター席。
呼んで二人が振り返る。
「よ。縫ったって?誰に刺された?」
笑うセージ。

マジでコワイんだよ、アンタのギャグは。

セージがグラスに手伸ばす。
慌ててオレは、それを止める。
「ストップ!オレはもうセージから酒もらわねぇから」
で、笑い出すセージとゲン。

チクショオ!こいつらっ

と、セージの隣、ケータが眉を下げる。
「オレに内緒でなんか楽しい事やってたんだ?」
「違うって、センパイ。センパイっ」

ワ〜ォ、セージが尻に敷かれてる。
それ見たら顔がニヤけた。
その顔、ケータが見て、睨んでくる。

なんだ?

見てると、セージの首に手廻して、いきなり。
目の前で、ベロチューしやがった!
セージも、全然平気でオレらの前でベロ絡ませてる。

そ、そういうキャラでしたっけ・・?お宅ら・・。

で、ゲンがオレの腕引いた。
「ジャマすんなってヨ」
「あ?・・・アレ?」
笑ってゲンがグラスくれる。


なんつーヤツラだよ・・。
セージに牽制されて、ゲンとくっついたら、今度はケータに
警戒されて・・・。

苦笑。


イイヨ。イイデスヨ。
オレにはゲンがいるもんネ!
ゲン以外いらねーんだもんネ!!



ニヤけたオレにゲンが眉間を寄せる。




「ラン、アル中の症状が出てっぞ」
「誰がアル中だ!」

笑うゲン。
その手を握り締めてオレはゲンの隣にいる。
たぶん、ずっと。
コイツが結婚しても。





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