カラフルなパッケージにブランドのロゴ。
その箱を持っては置き、置いては持ち上げ。

オレ(ワタヌキタツト)は腕を組んで、ソレを睨んだ。

最後の荷物の選別。
広げたドラムバッグの口。
明日から夏合宿が始まる。


悩む・・・。
オレは一度ナギに怒られてる。
それは先月のトレセン合宿の時の事だ。

別にオレはそんなに悪い事だと思わなかった。
だから簡単に。
「なぁ、オレと席替わって」
声を掛けた相手は、びっくりして。
「ど、どうぞ」
ってどもった。
集合場所から乗り込んだバス。
ナギの隣には既にどっかのヤローが座っていた。
ま、座席表がそうなってたからだ。



「センパイ・・」
「眠い」
オレはナギの首筋に顔を寄せてナギの匂いを嗅ぎな
がら、一眠りするつもりだった。
車の揺れも心地いい。
だんだん意識が落ちていきそうになった時、ナギが
溜息をついた。
「ワタヌキタツトのくせに・・・」

『ワタヌキタツトのくせに・・』?

「なんだよ」
目を開けると、バチっとナギと目が合った。
「お、起きてた・・?」
「オレがなんだって?」
「・・・席」
「席?」
オレはまた目を閉じた。
それにホッとしたのかナギの肩から力が抜ける。
「席位い、離れたって・・・いいんじゃねーの・・?
あの人、びっくりしてたし・・。どうよソレ」
答えないオレにナギがもう一度言った。
「ワタヌキタツトとして、どうよソレ」
だんだんとナギの言わんとしてる事がわかってきた。
「オレだから、いーんだよ」
「・・・ワタヌキタツトってこんなヤツって思った
だろーなぁ・・」
「・・・・」
「・・・ホモって思われたかもなぁ・・」
「うるせぇな」
呟くとナギが黙り込んだ。
それからオレはまたナギの肩に顔を埋めて、オレは
ウトウトと眠りに落ちた。
が。
到着と同時に目が覚めたオレを待っていたのは無言
のナギだ。
「あ・・?着いた・・?ナギ?」
ナギはサッサと足元の荷物を持つと、ゾロゾロとバ
スを降りる波に乗る。
「・・・・・」

お、おこってる・・・な、アレ。


その後は話し掛けるタイミングもクソも無い。
バラバラに集められて、それぞれの練習が開始され、
オレとナギは視線も合わせられないくらい離れてい
た。

グラウンドを走りながら、いったいいつになったら
ナギと話が出来るのか考えていた。
そのせいで、飛んでくるパスにも反応が遅れる。

しまった・・・。
いくらでも追いつけるチャンス球だったのに!

パスボールは勢いを失くして、出てきたキーパーに
キャッチされてしまった。

やべ・・っ

だが、それを顔に出す程オレは善人じゃない。
知らん顔してると、背後で中坊が怒鳴り散らされて
いた。

・・・・わりぃ・・!・・集中、集中。

だが、目の端にナギの姿が見え隠れするとぐずってる
中盤を通り越し、視線はどうしてもナギに集中してし
まう。

ナギが熱心にコーチらしきオッサンに話し掛けられて
いた。
たぶん蹴り方の事だろう。
ナギは一度膝を怪我してから、少し妙なクセがついて
いる。それでもキックの精度はかなりいい。
ソレを直す必要はオレはもう無いと思ってる。
だが、初めて見るコーチはそうは思わないんだろう。
舌打ちが出る。
オレが行ってこようか。

と、睨んでる方向から黒い影が視界に入った。

あ。
ボール・・!

慌ててオレは走った。
ビンゴ!

やるじゃん、アイツ・・!!
オレの手抜き反応速度に合わせてきやがった・・!
すげえ、精度だ!!

オレは球を足元に落とし、余裕でゴールに蹴りこんだ。

ラッキー・・・!

それに歓声と拍手。
オレはホッとしてまたナギの方を見た。
もうコーチは居なくて、他のヤツと並んでドリブル
練習してる。
はっきり言って。
気になって気になって練習どころじゃい。
早くナギに触りたかった。
抱き締めたかった。

・・違うな。
オレがアイツに甘えたいんだ。
さっきのあの冷たい態度がオレがナギに触った最後なん
て寂しすぎた。

なんも楽しくない。
せっかく一緒に来た合宿なのに、ハナレバナレ。
話しかける事も許さないオーラ。
マジ、お前だけだよ。
こんなにオレを動揺させるヤツは。


一旦本格的な休憩になって、オレはナギの方へ向った。
トレセンでよく見る顔がオレに話しかけてくるけど、そ
れもテキトーにカワシテ。
「ナギ」
呼ぶ前から既にナギは気づいてて、思いっきりイヤな顔で
オレを迎える。
いや、コッチ来んなって顔だ。
さすがにシカトも出来ないみたいで、ナギは頭を下げてく
る。

スンゲーツレナイ。

だけどな。
オレがそう思うのなんて一瞬なんだって、お前わかってる
か?
そう、一瞬にしてオレの瞳孔が縦に変形する。

「テメエ、わかってんだろうなぁ?」
横をすり抜けようとするナギにだけ聞こえるように低く囁
いた。
途端に、ナギの足が止まる。
それからコワゴワとオレを横目に見上げてくる。
「怒らせんなよ」
微動だにしないオレの腕を、ナギが引っぱった。
側に誰も居なくなるのを確認して、ナギがやっと口を開く。
「センパイ」

やっぱコイツ、かわいい・・なぁ。

でも、オレはそんな事は顔にも出さない。
「やっぱ、まずいよ。オレ、センパイと親しいなんて思われ
たくないし・・・」
溜息が出る。
「んだソレ・・。ホモって思われるって?」
「・・ちがう」
「じゃ、ナンだよ」
「さっきの、バスのヤツに、センパイの事聞かれたんだ。オ
レ・・・アンタの事話す自信ねえ・・。オレ、オレ、大丈夫
かな・・?普通にアンタの事言えてるかな・・?なんか、ヒ
イキ目っつーか・・なんかプチ自慢言っちゃいそうで・・コ
エェー・・オレ・・」
聞きながらオレは目を見開いた。
ナギが顔真っ赤にして恥ずかしそうに目を伏せる。
そのおでこに。
チュッとしてやる。
「センパイ・・・!!」
非難と同時にナギが足を蹴ってくる。
「言っとけよ。別に構わねえだろ。好きだって言っとけよ」
それを聞いたナギが逆上。
顔面にパンチしてくる。
もちソレもかわした。
悔しそうな顔のナギを両腕でキツク抱き締めた。
諦めたようなナギのふてくされた顔。
「いいから、アンタは、オレとはタニン!いい?」
完全に体をオレに任せてるくせに、まだ意地張ってる。
なら、いつまで我慢できんのか見てやろっかな。
「いーよ。シカトできんならしてみろよ」
勝気な目がクルッと上を向く。
それから少し伸び上がって。
ナギがオレにキスした。
「今からタニン」
ニッと笑うナギがするりとオレの腕から逃げてった。

なんつーワガママな恋人だ、アイツは。

それから夜まで、ナギはオレと目が合う度にビクつきながら
オレをシカトし続けた。
ま、その効果はあったみたいで、ナギはオレの話を振られる
事もそうそう無く済んだみたいだった。
ただのガッコの先輩。
近寄りがたい先輩って事にしとけば、ナギはオレについて事
細かく聞かれる事も無いんだろう。
特に関わりがなきゃ100人近い部員がいるんだからオカシ
イ話じゃない。




だが。
哀しいかな。
なぁナギ。
お前は朝弱い。
それはオレが重々承知だ。
一人起きだして来ないナギの部屋へ向うと、もう同室のヤツら
はメシを食いに行こうとしてるとこだった。
ノックしたオレに一瞬びっくりしたが、後輩を起こしに来たと
言ったら納得してくれる。
「起こしたんだけど。起きなかった」
「ああ。オレが起こすよ」
じゃ、と手を上げて3人が部屋を出てく。

チャンス到来。

オレは部屋の鍵を閉めてから、ナギのベッドに乗りあがった。
ナギは横向きで両腕を伸ばして寝てる。
足の間には、たごまったシーツが挟まってる。
そっと手を伸ばすと、ナギのそこはバッチリ勃起してた。

これが収まんなきゃメシ食いに行けネエぞ。

オレはナギのチンポを摩りながら、半開きの口に舌を入れた。
「ん・・−」
半分寝てる頭のナギは、一度離れた唇を弧に歪ませて笑った。
「なーに、笑ってんだよ・・」
またキスしてやると、今度はナギの手がオレの首に廻った。
唇を離しても、ナギは腕を緩めない。
「目、覚めたのかよ」
「起きてる、よぉ・・」
言いながらおかしくておかしくてしょうがないって顔。

こりゃ、まだ寝ぼけてるな・・。

朝の勃起したチンポは射精しにくい。
コイツを扱いてやってもたぶんナギが苦しむだけだ。
そう思うと手が引ける。

しょうがねえな、キス攻めだ。

ナギを少しでも放っておくとすぐ寝息を立て始める。
オレはナギのシャツを捲りあげてそこら中に歯を立ててやった。
「ひゃ・・!」
よこ腹を指でなぞって乳首を噛むと、ナギがカッと目を見開いた。
「ヤッ・・ちょ、うそ・・・センパイ!」
くすぐったくて堪らなくなったナギがどんどん小さく丸くなる。
サッカー小僧の張ったフクラハギ。その足だけが布団から飛び出
した。
真上から覗き込むと、ナギが伺うようにオレを見上げてくる。
「セ、ンパイ・・」
「メシだぞ」
「メシ・・・?」
手を引いて起こしてやると、ナギはボサボサの頭で背を丸めてる。
その頭を指で何回か梳いてやってもう一度キスした。
「顔、洗う・・」
「おう、洗え」
こんなナギを放って置けないのはオレが悪いのか。ナギが悪いのか。
とにかく。
このナギにはどう考えても、オレをシカトし続ける脳みそは残って
無かった。
なんとかナギの勃起も収まったようで、オレ達は騒がしい食堂へと
向った。
歩きながらも思いっきりオレに絡んでる。

コイツ、歩きながら寝ようとしてるな・・。

セルフだから座ってたって何も来ない。
でも、ナギは相当眠いらしく座った途端に目を瞑る。
「ちょっと待てって」
トレーを取りに行こうとするオレに寄りかかって、ナギは眠い眠い
と連呼した。
昨日のハードな練習をした後にした「アレ」がたぶんナギの体力を
極限まで消耗させていた。

バカなナギ。
お前、おもっきし皆に見られてるっつーの。
昨日のお前の努力は無駄だったな。

オレは噴出しそうなのを堪えて、自分の分とナギの分の朝食を運ん
だ。
ついでにオレの評価も上がっただろう。
後輩をかいがいしく世話する。
優しい先輩だってな。
なんせ、オレがお茶まで淹れてやったんだからな。
「ほら、ナギ、飲め。食えば目覚めんだろ」
「・・・牛乳がいい」
ぼーっとするナギに呆れながら、オレは空いてる席(under17参照
チヅカ ナツト君の席)に置き去りの、誰のか知らねえが、トレー
から牛乳パックを取って、ストローを刺して、ナギの口元に向けて
やる。
チューっと吸い出したのを見て、オレはナギの手にそれを持たせ
る。
それからオレはやっとこメシにあり付けた。

だが、どうもその曝け出した態度が功を奏したのか、ナギもオレも
誰かに纏わり付かれる事はなかった。

やっぱりナギの努力は無駄だったナ。
堂々としてりゃいいんだよ。
オレはワタヌキタツトなんだぜ?
別にサッカー上手けりゃなんだっていいだろ。
オレはオレなんだから。









さて。






未だにコンドームの箱を弄んでいるオレだが。
5日間の合宿。
こないだのトレセンなんかとはワケが違う。
どう考えたって、5日も禁欲なんて無理だろ。

やっぱ、持ってくか。
ナギの中で出しっぱなんてナギに悪いしな。
レンタルの布団にシミなんか作っちゃやべーだろ。
こういう準備万端なオレをたぶんナギはイヤがるだろうけどな。
こればっかは譲れねえだろ。
しょうがねえじゃん。
恋人なんだから。
セックスすんの当たり前だろ。
アイツは周り気にしすぎ。








オレは最後にゴムの箱をバッグの中、チャックの中に突っ込んだ。
これで。
どこに仕舞ったかわかんなくなる事は、無い!

ヨシヨシ。











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