ドキッとする。
あの背中を曝け出されて。

お前にだけ見せてやるって言うこの男に
誰が逆らえるだろう。

ああ、お願いだから。
一生のお願いだから。

オレを。
オレを、体だけで、オトさないで。
気持ちイイ事だけで、アンタに溺れたくない。

本当に。
本当の気持ちを。
アンタから引き出せるまでは。
オレは、アンタの背中に爪あと一つ残せない。

シノノメさん。
オレ、ココロからアンタに溺れたい。
ねえ、アンタのココロ、オレにちょうだい。
そしたらさ。
オレ。
我慢なんか一つもいらないで。
なんも意地なんか張らないで。
アンタの腕にすがり付いて泣いて。
なにもかも預けるから。
命も、体も、心も。

シノノメさん。




ねえ、だから、オレを好きだって言ってよ
シノノメさん。








「外は暑そうだな」
シノノメさんが薄いストライプの入ったスーツ
姿で、ホテルのロビーで足を組んでいる。
駅からの10分の道のりでオレの背中は汗をか
いていた。
「都内の暑さは異常だもん」
パタパタとTシャツをはためかせると、シノノメ
さんがニヤリと笑った。
「シャワーを浴びて行くか」
「え・・・」
キリリと鋭い瞳をその瞬間柔らかく歪めて笑うその
顔がどんなに貴重かオレは知ってる。
いつもはクスリとも笑いもしないその顔が、どんな
にオレの心臓に悪いか。
バクバクと鳴り出す心臓に気づかれないように、オ
レは慌てて、ナニイッテンノって口にした。
シノノメさんは、そりゃ面白そうにオレを見て笑っ
てる。
そう。
この人はさ。
オレを面白がってる。
あきらかに。
バカにされてんだよな。ガキだからさ。
なんせ、昨日今日、ツッコマレル事を覚えた体だ。
そりゃ嬲りがいがあるんだろうな。

「さてメシでも食いに行くか」
シノノメさんが立ち上がる。
オレもその後へとついて歩くと、シノノメさんは
エレベーターの前で止まる。
「え、ここで食うの?」
「ああ、いい酒置いてるんだ。個室もあるしな」

コシツ・・。
なんとなくその響きに、エロい感じがするのは
オレだけなのかな・・?
なんとなく大人っぽいエッチな雰囲気にオレは
シノノメさんから顔を背けた。
「期待してんのか?」
その顔をこの男は見逃さず、すかさず突いてくる。
「バカじゃねえのっ」
オレは俯きながら吠えた。
どーせ負け犬。
やっと着いたエレベーターのドアが開く。
シノノメさんの腕がオレの背中を軽く押した。
促されるままオレはその箱へ乗り込む。
これも言わば、コシツだ。
そう考えると、バカな事に気づいた。

シノノメさんのせいだ。
ぜんぶ。
アンタと一緒だから何だって、オカシク感じるんだ。
いつもはただ平然と通り過ぎることもモノも全部が、
シノノメさんに触れるモノ全て、場所が全て、オレ
が特別に感じてるだけで。
世界が変わったわけでもなんでもない。
大人の世界だからとかカンケイ無い。
オレがガキだからとかも違う。

アンタが目の前にいるからだ。
それだけなんだ。


そのレストランは、東京の南側を一望する窓が開け
ていた。
「キレイだろ。東京も夜景だけはナカナカだな」
「うん。・・・オレさ、夜景がキレイとか・・初め
てかも・・」
真っ暗な窓に映りこむシノノメさんの目を見上げると、
シノノメさんと目が合うのがわかる。
不思議だ。ガラスの中で目が合ってる。
本人の目を見つめてるように、しっかりと目が合ってた。
シノノメさんは、そうかって言ってタバコを出した。
「ワケ、聞いてもいいよ?」
オレは意地の悪い笑顔。
「知ってるさ。お前の事は調べ済みだ」
「それオレが思ってるのと違う答えじゃん」

たぶんシノノメさんは、オレが母子家庭とかその母さん
を最近亡くした事とか、そんな事がオレの感性を負に
働かせてて、キレイなもんに素直に感動できないガキだ
って思ってんだろう。
「違うよ」
オレは隣に立つ男の顔を見上げた。
「シノノメさんと一緒だからだ」
一生懸命言ったつもりだったけど、途中掠れた。
シノノメさんはタバコを咥えたまま、さっきと変わらず
窓の外を眺めてる。

聞こえたのかよ・・?
オレの殺し文句。
オレがさっき気づいた本気の気持ちだよ?
マジなんかリアクションしろよ・・。
黙ってるなんて、ずりぃよ・・。

オレがもう耐え切れず目を逸らした瞬間。
シノノメの腕がオレの肩を引いた。
顔がスーツに押し付けられる。
タバコの匂いが直でした。
「お前、もう離れられなくなってもいいのか・・?」
「え・・?」
「お前、ガキだからな。いつかオレから逃がしてやっても
いいと思ってたんだよ。お前なんか意固地だしな。どんな
に体が良くったって、最後の最後はオレを拒んでるじゃね
えか。本当はつれえんだろうって。オレなんかじゃつれえ
んだろうって思ってた。素直になんもかんも預けられる相
手にゃ、オレは不似合いなんだろうって」
その告白を何度も頭の中で噛み締める。
考える。
そのまま聞く。
オレの中に落とす。
しみこませる。

そこからジワジワと沸くものがある。
「誓わせてやろうか、体に」
シノノメさんの、恐ろしく凄絶な艶っぽい瞳。
大人の色香とかなんとかって言い方もあるけど、この人
だから。この人の欲情した瞳だから。
オレは一発でオチル。
「体なんか・・っオレは、ちゃんと、心に誓ってるよ・・っ」
瞼が震える。
熱い喉が掠れた声しか出させない。
オレはシノノメさんに、やっぱりガキだなって言われてキス
された。

オレ達は用意された料理には一口も手をつけないで、ガラスに
張り付いたままセックスを始めた。
裸の背中を冷房で冷えたガラスがオレをビクつかせた。
「東京中に見せてやるか。お前がオレに抱かれてどんなになるか」
ニヤリともしない口調。
本気で、この人はオレをサラシモノにする気なんだ。
電気が煌々とついたこの個室で。
オレに誓わせるために。
オレが誰のモノか知らしめるために。

そんなのって。
反則じゃん。
そんなの、知んない。
アンタがそんな風に、オレを独り占めにしたいみたいな気持ち
持ってるなんて、知んなかった。
胸が熱くなる。
もしかしたら、結婚式のキスってこんな感じ?
オレはアンタのものって誓う。
心にはもう刻んであるけど、形を残したいって気持ちもわかる。
アンタがいつも言うのはソレ。
ココロは見えないから。
体で。
手に掴めるように。
触れるように。
いつだって確かめられるように。

「シノノメさん・・!」
「もう、オレから逃げられねえからな、セイショウ」

揺さぶられる意識の中でオレは何度も、逃げないって返事をした。
逃げない。
ついてくから。
だって、探してたのはオレの方。
オレの方が、ずっとずっとアンタを好きなんだよ。


ギュッと握りこまれた手の中で弾ける。
と。
バチンとやけに耳に響く音がした。

え・・?
なに・・?
ジンジンする・・。
痛い・・?

未だに握り締められた真っ赤なオレのチンポをシノノメさんが
ハンカチで包んだ。
「な・・に?」
「暫く、痛てぇだろうが、2,3日すれば慣れる」

え・・?
チンポが異様な熱さと痛みを帯びてきて、オレの頭が冷えていく。
シノノメさんがオレの中からズルリと出てった。
それからオレはへたりこんで。
シノノメさんが、おれのチンポを包んでたハンカチを外す。
そこに。
「うそ・・・っ」
まるっと血色のいいカリのすぐ下。
見慣れない金属の色と輝き。
「いいだろ?石はダイヤだ。なかなか似合うな」

ヒッーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

オレは絶叫を寸でのところで、飲み込んだ。
目の前がクラクラする。
た、確かに、確かにさ、オレ、皮余ってたけど・・!
そんな・・っ
チンポに・・!
チンポに穴開けられ・・・!

こ、これが、体に誓わせるってコトだったのかよ・・!?

「セイショウ?しっかりしろ。セイショウ?」
シノノメさんの姿が薄くなる。
声もどんどん遠くなってく。

ああ、だめだ・・オレ。これ貧血だ・・。

「ったく、オレの命背負ってくれる男になるんじゃねえ
のか、テメーは」
シノノメさんの笑い声が薄れる意識の最後聞こえた気がした。


それで、気を失ったオレは、下半身丸出しで、シノノメさんの
上着に包まれて、レストランの中からホテルの部屋までを、お
姫様抱っこで移動したらしい。
目が覚めてもチンポにはダイヤのピアスがはまったままだった。
輝いてたよマジで。






で?
オレはシノノメさんといわゆる婚約を果たしたわけだけど。

まだ、一回も。
一回だって、好きだって言ってもらってない・・!!

・・・・前途多難。





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